
長いので目次は折りたたみにした
- アラビア語由来
- ゲール系言語由来
- スラヴ系言語由来
- 北欧系言語由来
- ペルシャ語由来
- モンゴル語・テュルク語由来
- ラテン・ギリシャ語由来
- アウクシリア
- アクイラ
- アグリアネース
- アクリテース・アクリタイ
- アコンティステース
- アスピス
- アタナトス・アタナトイ
- アーラーリウス
- アリトモス
- アルコン・アルホーン
- ヴァランゴス
- ヴィグラ
- ウェクシッルム
- ウェーレス・ウェーリテース
- エクエス・エクイテース
- エクサルホス
- エクスクビトレス
- エクドロモス
- カタフラクト
- カルケウス
- ガレア
- グラディアートル・グラディエーター
- クリーバナーリウス
- クールセス
- ケントゥリオー・センチュリオン
- コミターテンシス・コミターテンセス
- 護民官
- コントス・コンタリオン
- シグヌム
- ズィクーリオン
- スクータトス・スクタトイ
- スクートゥム
- スパタ
- スパティオン
- セルウス
- タグマ
- トーラークス
- トクソテース・トクソタイ
- ドラゴンの旗
- トリアーリウス・トリアーリイー
- ハスタートゥス・ハスターティイー
- バッリスターリウス
- パラーティーヌム
- パラメーリオン
- ピールム
- ヒッペイス
- ヒッポトクソテース・ヒッポトクソタイ
- ピロス
- プーギオー
- ブーキナ
- ブケッラーリウス・ブケッラーリイー
- プリーンケプス・プリーンキペス
- プルムバタ・マルティオバルブルム
- プロドロモス
- プロノイア
- フンディトル
- ヘタイロス・ヘタイロイ
- ペルタステース・ペルタスタ
- ホプリテース・ホプリタイ
- メナウリオン・メナウリアトン
- ランケア
- リーミターネウス
- レガートゥス・特使
- レギオン・レギオーナーリウス
- ロハーゴス
- ローリーカ
- ローリーカムースクラ (ムスクラタ)
- 英語あるいは古フランス語
- その他
- 謎
- 参考文献
マウント&ブレード2バナーロード (以下, BL) のmodの翻訳で頻繁に出てくる用語の意味をまとめる. (改めて見返すと, たいていAOEとか類似ゲームからぱくってきた名前で, 用法の正確さが怪しいものが多い) 日本語修正校正Modや, 他のModの翻訳を作る際に調べたものなので, カナ表記は私のMB2翻訳方針に準拠している.
ここでは, これらの語が歴史的に使われた実態のあるものであるか, 正しい用法なのか, ということに主に関心がある. よって, 想像を膨らませたり, 詳細な設定を書くことは目的としていない. 加えて, 何度も言っているように, 外国語をカタカナで「正しく」表記することは不可能である. しかし, 古典ラテン語などは研究が進んでおり, 発音規則と, 発音が比較的単純であることがかなり判明している. そのため, 原語の表記や発音の規則への対応が可能な限り一貫性を持つような表記にしている. 少なくとも, 急に英語訛りになったり, 理由もなく存在しない音素が付け足されたりはしないだろう.
念の為に言っておく. いわゆる「歴史警察」をしたいわけではない. マウントアンドブレード2の舞台のカルラディアは, 現実の歴史や文明を参考にしていても, あくまで架空の大陸であり, 現実との連続性も, 現存する国家との歴史的一体性もあるわけではない. 純粋に, 本来どういう用法だったかと, フィクションでどう使われているかの比較がしたいだけである.
私にアラビア語・ペルシャ語・モンゴル語の知識はあまりない, ゲール語関連も入門書を少し読んだ程度ということに留意してほしい. そもそも, 資料探しが全然足りていないので, 正確さを求めるにはさらなる調査が必要だろう.
アラビア語由来
ペルシャやトルコ語と混同されていることがたまにある. 北アフリカの言語も含めた.
アスカリ
Ascari と表記されていた. アラビア語で兵士とか兵隊を意味する (عسكري) が由来だろうか. オスマン時代のトルコ語でも軍事官僚を指す語として使われた, こちらに言及する資料では askeri と表記されていた.
https://resolve.cambridge.org/core/books/abs/dynasties/glossary/1803AC1FC1CEBD6675E1840F925C8B03
カスカラ
kaskara と表記されている. 典型的にはサハラ周辺で見られ, 刀身はまっすぐかつ両刃で, 十字型の鍔を持つ. どことなくヨーロッパの意匠が混ざっているように見える不思議な剣である.
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/27262

クァンナース
Qannasと表記されている. アラビア語の قناص だろうか? 狙撃兵という意味らしい.
グラーム
Ghulam と表記されている. アラビア語で召使いあるいは奴隷兵を意味する غلام が由来で, ここではトルコ語由来のマムルークのような意味を意図した用法のようだ. 複数形風に表記するならギルマーン ( غِلْمَان ) になる. ご存知のように日本語版では区別がついていないため混乱をもたらしている.
コレマン
Koleman と表記されている. 語源はわからない.
ハッサキ・ハッサキーヤ
Khassaki と書かれる他, Al-Khassaki, Khassakiya という表記があった. アラビア語のハーッサ (خاصه) は「特別なもの」という意味で, 貴族階級, 特権階級のことを指す言葉としても使われたようだ. 一方で, トルコ語ではこの語を由来とするハーセキという語が, スルタンの側近を表す語として使われている. 例えば, ハセキスルターン (خاصکى سلطان) はオスマン帝国のスルタンの配偶者, いわば皇后を意味する (https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Haseki_sultan&oldid=1286693521). しかし, 兵士の名前に使われているのに皇后を意図した用法とは考えにくい. 一方で, ハッサキーヤ (khassakiya, 原語のスペル不詳)は, (スルタンの) 従者という意味があるので, こちらの意味で使っている可能性がある. khassaki だけで護衛という意味になるのだろうか? 他の歴史ストラテジーゲームで, 騎兵にKhassakiという名前が使われ, 「スルタンの護衛」と解説されている例を見つけた. この「誤用」が元になっているのかもしれない.
ハラーミー
Harami と表記されている. 腹身ではない. 盗賊の兵種で使われていることから, アラビア語で盗賊・犯罪者・罪人を意味する حَرَامِيّ のことだろう.
ファーリス
Faris と表記されている. アラビア語で騎士を意味する فارس だろう.
フリッサ
flyssa と表記されている. アルジェリアの片刃の剣である. ただし, この名称は植民地時代にフランス人が付けた名前であり, 現地語では ajenoui または uturam というらしい.
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Flyssa&oldid=1260750674

ムハドラム
Mukhadram と表記されていた. アラビア語の مُخَضْرَمٌ のことだろうか. イスラム教の無明時代と預言者の時代の両方を生きた者というのが本来の意味らしい. だがそれでは意味がわからない. 転じて「ベテラン」という意味がある? https://alarabiyah.sakura.ne.jp/animals/arabianhorses/wordlist-horseracing/
ムバーリーズ
mubarizun と表記されている. アラビア語の مبارزون が由来らしい. 発音記号をみると, n に対応する音がない. 決闘者とか闘士という意味で, 戦いの初めに一騎打ちを挑む戦士のことらしい. アラビアだけでなくサーサーン朝時代のペルシャでも一騎打ちの文化があったという.
ゲール系言語由来
ゲール語は発音が不規則かつ曖昧一定に定まらない傾向にあるため, これが正確な表記なのかまったく自信がない. 詳しい人がいたら教えて下さい.
イヘイロウ
ウェールズ語の uchelwr から来ている. 貴族という意味になる.
ガーローグラフ
アイルランド語で(外国人の)傭兵を意味する gallóglaigh に由来する. 英語風に表記するとギャロウグラス (Gallowglass) になる. アイテム名に登場するギャロガイチ (Gallogaich) はここに由来するとファンの間で噂されているが, 作中では何も言及がない.
カルニクス
carnyx. 古いゲール語由来? 古代ガリア人が使用した長い金管楽器で, しばしば先端が口を開けた動物の頭の形状をしている. 彫刻などで, 開口部を頭上に高く掲げて吹く様子が描かれている. 軍隊で使用されたということから, 視覚的・聴覚的に威嚇する意図があったのかもしれない.
現代の再現例ゲシス
正確にはゲール語ではなく古英語の単語らしい. gesith は貴族の従者を指す.
https://en.wiktionary.org/w/index.php?title=gesith&oldid=84405452
ケヘルン
アイルランド語の ceithern が由来で, 英語ではカーン (kern) になる. しかし, 中アイルランド語の発音はわからないので現代風に読んでいる. 現代風と言ってもアイルランド語はアイルランドでも話者が少なく, 標準語として整備もされていないので「正しい発音」は存在しないと言っていい.
サエスウィル
ウェールズ語の saethwyr に由来する. 射手という意味らしい. 単に saeth という場合もある.
スキルトロン
正確にはゲール語ではなく英語の schiltron である. 槍兵の密集隊形のことらしい. 古い単語なので表記揺れが多いようだ. 古英語由来なので, 現代英語っぽくない表記にしている. ゲール語で対応する単語があるのかはわからない.
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Schiltron&oldid=1253699132
フィアン・フィアンナ・フェーニド
fian と表記されており, おそらく英語化した単語だろう. フィアンナ (fianna) は集合名詞的な用法あるいは複数形らしい. fiann, fein, féinní, féinnidh という綴りもある. 単数形でも, 集団を表す語らしい (https://en.wiktionary.org/w/index.php?title=fiann&oldid=83837354). 古いアイルランド語風に表記するとフェーニド (fénnid) となる(https://en.wiktionary.org/w/index.php?title=f%C3%A9inn%C3%AD&oldid=75826068). しかし古代-中世のゲール語の正確な発音はわからないし, そもそも統一されていない可能性がある.
ヘルウィル
helwyr と表記されている. ウェールズ語だろう. 単数形は helwr (ヘルウール)で, 猟師のことをいうらしい.
Pendraic と表記されている. メインクエストで登場する地名である. キャンペーンマップ上ではバッタニアの領地に同名の村と城がある. バッタニアは古代ケルト文化を意識しているから, ウェールズ語に由来するのかもしれない. そうならば, ペン゠ズライグ (Pen Ddraig) が由来かもしれない. 逐語訳すれば「竜の頭」となる。英語では Pendragonと呼ばれる. 一方で, 中ウェールズ語ではペン゠ドレイグ (Penn Dreig) と表記されるらしい (https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Pendragon&oldid=1281393592, 中ウェールズ語の正確な発音は知らない) ので, 表記をどうするか迷う. 現在の日本語修正版では「ペンドリック」にしていたが, ウェールズ語に従うなら公式版の「ペンドライク」に戻すべきだし, 元になっていると推定される語にこだわるなら, 中世風にするか現代語風にするかという選択肢が更に増える.
ペンドライク
スラヴ系言語由来
ここでは原語は基本的にロシア語で統一し, 読みもロシア語風にしているが, Modの作者の多くはロシア語・ベラルーシ語・ポーランド語・ウクライナ語・チェコ語などの区別がついていないようにみえ, 実際にはごちゃまぜである場合が多い. ロシア語に統一たのはあくまで便宜上の措置だと思っているので, 一定のルールに従いつつも, 意図的に現代のどの言語とも微妙に違う表記にしている.
ラテン語やギリシャ語と異なり, Modで名詞の複数形が使われることはほとんどなかった.
ヴァリャーク
varyag, варяг. いわゆるヴァイキングのこと. 歴史的には, ヴァリャークはギリシャ語由来であり, ヴァイキングとは別の語源だったようだが, 現代では両方の意味で使われれいる.
コペイシチク
Kopeyshchik と表記されている. ロシア語ふうならカペイシクと表記することになる. копьё が槍, 特に長槍のことなので, 長槍兵ということになる.
シェストピョール
shestopyor と表記されている. шестопёр のことで, 直訳すると「6つの羽根」という意味になる. flanged mace の一種で, 6つのひだがあるメイスだからこういう. 東ヨーロッパ各地で発見例があるようだ.
ストレロク
strelok と表記されている. сторелок, 射手のこと. 現代では銃の使用者を指すことが多く, 現代ロシアの軍事用語では選抜射手のことを指すらしい. strelec という表記もあり, おそらくはストリレーツ (стрелец) が由来である. 矢を意味するストレラー (стрела) から派生した単語だと思われる. ちなみにウクライナ語ではストリレーツィ (стрілець) になる. S.T.A.L.K.E.R. シリーズの重要人物の名前もこの単語が由来だろう.
スメルト
smerdと表記されている. 元々は自由農民を意味し, 後に農奴を意味するようになった смерд が由来と思われる. 自由民階級出身の徴募兵, というくらいの意味で使っているのだろう.
トポルニク・トポルシチク
toporshchik と表記されている. топор が斧なので斧兵だと思うが, トポルニク (топорник) ではないだろうか?
ドルジーニク, ドルジーナ
BLの日本語版の訳ではなぜか「ドルジーナ」になっているが, 英文では Druzhinnik (дружинник) である. ドルジーナ (дружина) という単語は存在するが, 現代ロシア語では単にスポーツなどの「チーム」という意味になり, 歴史的な用法では, キエフルーシの時代に大公の側近の戦士団を意味した. そしてドルジーニクはその構成員を意味する.
よって, ドルジーナとは集団を表す語であり, 日本語版での「ドルジーナ」への改変は不自然な用法で, 意図がわからない. なぜこのような改変をしたのだろうか.「ドルズヒナ」みたいな表記にされてないだけましか.
プリズヴニク
prizvnik と表記されている. プリズィヴニーク (призывник) のことだろうか. 徴兵された新兵, あるいは現代的な用法では兵役対象者のことであり, 使用されていたのはストゥルギヤの低Tierの歩兵なので, 徴募兵か新兵くらいの意味で使っていそうである.ペルナーチ
pernach と表記されている. пернач から来ているのだろう. メイスの一種. シェストピョールとほぼ同じで, 羽根が6つない場合はペルナーチを名乗れることになる.


ボガティーリ
bogatyr と表記されている. богатырь のことだろう. 「勇者」を意味する言葉で, 元々はスラヴ語ではなくテュルク系の言語由来とされている. バートゥルも参照せよ.
ボヤール
boyar と表記されている. ロシアの貴族のことを表す単語, とされているが, ロシア語にはボヤールという単語はない. 他のスラヴ系言語にもたぶんない. ロシア語ではボヤーリン (боярин) という. 英語化して訛ったのだろう. 貴族を意味する類似の単語は他のスラヴ系言語にもあるが, ボヤールみたいな発音やスペルのやつは多分ない.
ポモストニク
pomostnik と書かれている. помощник だろうか?
ホロプ
kholopと表記されている. 召使いや従者を意味するホロープ (холоп) だろうか.
ラトニク
ratnik と表記されている. 戦士, 兵士を意味する ратник のことだろう.
ルチニク
luchnikと表記されている. лучник のことだろう. луч は弓を意味するので, 射手という意味になる. Mod作者がストレロクとどう使い分けているのかは分からない.
北欧系言語由来
Ýskelfir と表記されている. 以下のサイトによると, 「イチイの弓を振る者」という意味らしい. Modでは射手として登場している.
イースケルヴィル
Ulfhedinn, Ulfhednar, Ulfheðnar などと表記されている. 古ノルド語の Úlfhéðinn に由来する, ベルセルクルと対になる. 直訳すると「狼の毛皮を着た者」くらいになる. 複数形風に言うと, ウールヴヘーズナル (Úlfhéðnar) となる. 意味上も「ウルフスキン」と似ているが, 開発チームはウルフスキンはフィアンナに着想を得たと発表している. しかしながら, 開発初期ではバッタニアとストゥルギヤのどちらを北欧寄りの設定にするかで何度か変更があり, その影響で現在でも設定の混乱の名残りが見える. いわゆるヴァイキングのこと. 古ノルド語では víkingr となり, ウィーキングルというような発音になる. いわゆる海賊だけでなく, 開拓者とか冒険者という意味合いも込められていた. 語源には諸説あるようだ. 北欧言語の多くでもこの語を継承した語彙がある. ギリシャ語の「ヴァランゴーン」も参照せよ. https://en.wiktionary.org/w/index.php?title=drengr&oldid=83200111 spjot と表記されている. 投擲槍のこと. drengr と表記されている. 古ノルド語で, 若者とか勇敢な男とかいう意味らしい. 古英語で戦士を意味する dreng の語源らしい. BL本体では huscarl と表記され, Modでは Húskarl, Housercarl と表記されることもある. 古ノルド語の húskarl のこと. 従者とか護衛とかを意味する. 古英語では hurcarl になり, 英語でも housecarl というスペルで残っているので, modではノルド系でもヴランディア系の兵士でも登場してしまうことがある. 過去作のWarbandではノルド王国の最上位の兵種として登場していた. BLでは装備品に名前が出てくるが, NPCには存在しない. Hersir と表記されている. 古ノルド語の hersir か. 小領主とか軍の指揮官とかを意味する. Beserk, Berserkir, Berserkers, などと表記されている. 古ノルド語のベルセルクル (berserkr) のことで, 複数形ふうに言うとベルセルキル (Berserkir) で, ber (熊) serkr (衣服) という意味に分解できるから, 「狼を着ている」ウールヴヘージンと対になっている. 狂戦士と意訳される. 英語では berserker と表記される. rekkr と表記されている. 古ノルド語で戦士のこと. Modでは武器の名前と組み合わせて XX rekkr という使い方をする場合が多かった.
ウールヴヘージン
ヴィーキングル
スピョト
ドレングル
フスカール
ヘルシル
ベルセルクル
レックル
ペルシャ語由来
現代ペルシャ語のスペルしか知らない.
アヌーシャ
anusha と表記されている. アケメネス朝の軍隊の名称で, ペルシャ語の انوشه から来ているのだろう. 「不死隊」と意訳されることも多い. たまにアタナトイという名前が使われることがあるが, アタナトイはギリシャ語である.
アスワール, サヴァール
aswar と表記される. 複数形は アスワラーンあるいはアスバーラーンで, aswaran と書かれる場合が多い. サヴァールもだいたい同じで, 複数形はサヴァーラーンになる.
サーサーン朝期の軍の中核となった騎兵の呼称である,
グリヴパンヴァル
grivpanvarと表記されていた. 中ペルシャ語 گریبانور で, 装甲騎兵のこと (中ペルシャ語のスペルは知らない) を指す. 直訳すると「首当てを付けた者」という意味らしい. カタフラクトの別称であるラテン語のクリーバナーリウス (clibanarius) は, この単語に由来すると考えられている. ギリシャ語化したクリヴァノフォロス (κλιβανοφόρος) も同様だが, Modでこっちが使われている例はあまり見ない.
ハシャル
ハラシュを参照
モンゴル語・テュルク語由来
英語の情報が少なくてよくわからん
アキンジ
カンクリ
BLでは Qanqli と表記される. kanqli, あるいは kangly, 康曷利と表記されるテュルク系の民族のことだろうか. 一部がモンゴル帝国に服属し, 近衛軍であるヘシグに組み込まれたという話があるので, そこに由来するのかもしれない.
ダルハン
darkhan と表記されていた. モンゴル語の дархан が由来だろう. ただし, テュルク系言語では Tarkhan と言ったり, ペルシア語にも広まっていたりするようだ. その上, 言語や時代によって様々な用法がある.
モンゴル語版では, 本来は鍛冶屋を意味する言葉だが, 後にハンから特権を与えられた身分を意味する言葉になった, と書いている.
英語版では, 中央アジアで軍の指揮官とか総督とかの肩書きに使われた, と書いている. BLでの表記はモンゴル語風だが, 用法はこちらに近いかもしれない.
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Tarkhan&oldid=1286361425
チェルビ
cherbi と表記されている. モンゴル語の чэрби に由来する. ハンの近衛軍の部隊の1つである, トゥルハク (турхаг) の部隊長のことらしい. ヘシグも参照せよ.
トゥグ
BL本体に登場し, tug と表記されている. モンゴル語のトゥグ (туг) あるいはトルコ語の tuğ が由来だろう. 軍旗の一種である. 長い竿の先端に飾りを付けたり房を垂らしたりしているため, 旗というよりは日本の「馬印」に近い形状である. 現代のモンゴル軍でも儀仗用に使われているし, 黒いトゥクは軍の記章のモチーフにもなっている.
クーザイトのコンセプトアートにも, それらしいものが描かれており, モンゴルのものとオスマン帝国のものの意匠を混ぜているようにみえる. ゲーム内に登場するものは, モンゴルのトゥグに幡を付け足したような形状になっている.
BLの日本語版では, 「果てしない草原地帯の引き綱」「膨大な群れの引き綱」のように「引き綱」という意味のわからない名称になっている. 機械的に英単語の tug に置き換えたのだろう. 全体的にアイテムの名称としておかしいことも含め, 訳文を確認してからリリースしているのか疑わしいと改めて思う.
トルグード
モンゴル語の Торгууд に由来し, Torguudと表記されている. Tunghautと表記されることもある. 元々は部族の名称だが, チンギスハンに服属しハンの近衛軍に組み込まれた可能性がある, と書かれている.
https://mn.wikipedia.org/w/index.php?title=%D0%A2%D0%BE%D1%80%D0%B3%D1%83%D1%83%D0%B4&oldid=815238
当初は英語版ウィキペの「ハンの宿営の昼間の警備を担当する部隊」という記述を参考にして, 「昼警騎兵」という意訳を与えていた.
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Kheshig&oldid=1279240750
だが, モンゴル語版の項目には言及がない. トゥルハグ (турхаг) という射手部隊, ホルチというハンの周囲の昼間の警備を担当する部隊, 夜間警備を担当するヘフトゥールがある, としか書いていない.
バートゥル
Baatur と表記されている. モンゴル語の Баатар が由来だと思う. テュルク系でも Baghatur という似た単語がある.
ハルヴァーチ
Kharvaach と表記されている. モンゴル語の харваач のことだろう. 直訳すると射手ということになるが, この単語が使われているModでは弓騎兵だった.
ハラシュ
Kharash と表記されている. モンゴル語では Хашар か. 最前線に出される奴隷兵あるいは懲罰兵のこと. 正確にはモンゴル語ではなく, ペルシャ系の言語が由来らしい.
https://ru.wikipedia.org/w/index.php?title=%D0%A5%D0%B0%D1%88%D0%B0%D1%80&stable=1
ヘシグ
Kheshig と表記されている. 他のゲームでは「ケシク」という表記をよく見る. BLの日本語版では「ケシグ」という珍しい表記をしていた. モンゴル語の хэшиг が由来だろうか. モンゴル語のヒシグテン (хишигтэн) とはハンの近衛部隊のことで, ホルチやヘフトゥールもヘシグテンに含まれる. その中でも夜間の警備部隊であるヘフトゥールのリーダーが хэшиг と呼ばれていたらしい.
ヘフトゥール
Khevtuul と表記されていた. モンゴル語の хэвтүүл だろうか.「寝床の番人」というような意味で, ハンの宿営の夜間警備を担当するらしい. ヒシグテンの記事によれば, 元朝秘史に言及がある.
ホルチン
Khorchin と表記されていた. モンゴル語の хорчи が由来だろう. ヒシグテンのうち, ホルチ (хорчи) と呼ばれる昼間の警備部隊の隊長がホルチンと呼ばれていたらしい.
これも出典がヘシグの項目で挙げたモンゴル語版ウィキペディアくらいしか見つからない. 元朝秘史を読めば何か書いてありそうだがまだ読んでない.
ラテン・ギリシャ語由来
文献が充実しているため, 残っている語彙もとても多い. 他の言語で借用されている物も多く, 学術用語にも使われているなど, ヨーロッパの様々な言語に大きな影響を及ぼしている, あるいは名残りがある.
BLの設定から, ギリシャ語は古代・中世を念頭においた表記に, ラテン語は古典期に準じた表記にする.
ラテン語は, 文字には表記されないが, 母音の長短を区別する. ウィキペディア日本語版をはじめ巷のサイトでは長短を区別せずに表記する例が多いが, 今回は名称について議論したいため, 細かく区別して書いている. ラテン語のスペルは, 特に断りがなければ研究社羅和辞典が出典になる.
アウクシリア
auxilia と表記されていた. ラテン語で援軍を意味するアウクシルム (auxilum) の複数形の auxilia のことだろう. 帝政初期のローマ軍に現れ, 基幹となる歩兵の補助となる, それ以外の射手や騎兵などの部隊のことを指しているようだ. Modでの用法は文法的に怪しい事が多い.
アクイラ
ラテン語の aquila から来ており, ローマ軍の軍団旗の一種を意味する. 元々は鷲を意味し, 鷲を象っていたものが使われていたのだろうが, 軍団 (レギオー) ごとに異なる意匠のアクイラを持ち, 鷲以外の意匠もあったようだ. アクイラを持つ旗手はアクイリフェル (aquilifer) と呼ばれる. 複数形ならアクイリフェリー (aquiliferi) になる. ローマ軍は, アクイラの他にウェクシッルム (vexillum) とシグヌム (signum) と呼ばれる軍旗も使っていた.
実際のアクイラは布を使っていないようなので, その見た目はいわゆる旗には見えない. むしろ日本の「馬印」に近い. そのため, 現代英語ではこのような種類の旗を指す vexilloid という造語があるようだ.
BL本体にも多数の軍旗アイテムが登場するが, アクイラ・ウェクシッルム・シグヌムのような語は使われておらず, 英語で flag, standard, banner といった単語が使われているだけである. そして, これらの語の用法と, アイテムの実際の形状は必ずしも一致してない. さらに, 日本語版ではそれ以上に訳が破綻していて意味不明になっている. そのため, 私の日本語校正modでは, 旗のステータス上昇効果の大きさに合わせて訳を変えることにした. ほとんどの軍旗アイテムは効果の大きさの違うものが各カテゴリ3種類存在したため, 旗 < 隊旗 < 軍団旗, の順に効果が高くなるようにした.
アグリアネース
agrianian と表記されていた. ギリシャ語のアグリアネース (Ἀγρίανες) と思われる. 元々は部族の名前であるが, マケドニア軍で投擲槍兵として戦ったことが知られている. この語が使用されていたModでは, 古代ギリシャ風の勢力の投擲槍を装備した軽歩兵の名称 "Agrianian Peltast" に使われていた.
アクリテース・アクリタイ
ギリシャ語の ἀκρίτης 由来で, ビザンツ帝国の国境警備兵のこと. たいていは複数形風のアクリタイ (akritai, 原語では ἀκρίται) と表記される. ラテン語のリーミターネウス (limitaneus) も国境を意味するリーメス (limes) に由来しており, 同じような使われ方をしている. Modでは1人でも複数形風の「アクリタイ」という表記がよく使われる.
アコンティステース
Akontistís という表記が見られた. 古典ギリシャ語のアコンティステース (ἀκοντιστής) のことだろう. 投擲槍を扱う兵士のことである. 投擲槍を意味するアコンティオ (ακόντιο) に由来するのだろう. 現代語ではアクセントが少し変わっているが, 槍投げ選手のことをアコンティステースと言うらしい.
アスピス
aspis と書かれる. ギリシャ語で盾を意味するアスピス (ἀσπίς) のことをいう. 古代では特に円形の盾をいい, よく壺とかに描かれているホプリテースの持つ円形で大型の盾がアスピスとされる.
アタナトス・アタナトイ
複数形風のアタナトイ (Athanatoi) と表記される事が多い. ギリシャ語のアタナトス (ἀθάνατος) から来ており, アタナトイ (ἀθάνατος) は複数形である. ア (ἀ, 無) - タナトス (θάνατος, 死) ということで, 「不死の」「永遠の」という意味になる.「不死隊」と意訳される. タグマ軍団の一種で, 精鋭部隊だったとされる.
創作ではペルシャ風の勢力にもアタナトイという兵士が登場することがある. これはアケメネス朝にも不死隊という意味の名称を持つ軍隊が存在していることをヘロドトスが記録していたため, ギリシャ語風の呼び方になったのだと思われる. (「アヌーシャ」の項目を参照せよ)
アーラーリウス
Modでは eques alaris のように, 騎兵であることを明示的にした表現が目立った. ラテン語のアーラーリウス (alarius) から来ている. 翼軍, あるいは隊列の左右を固める兵という意味で, 通常は騎兵が担当する. アーラーリス (alaris) は, alarius の形容詞版である,
アリトモス
Ἀριθμός. タグマの1つで, ヴィグラの別名ともいわれる.
アルコン・アルホーン
英文では archon と表記され, 日本語ではアルコンと表記されることが多い. ギリシャ語の ἄρχων に由来する. 古代風にいうなら「アルコーン」で, 中世風にいうなら「アルホーン」となる. 古代から軍事指導者の称号として使われ, ビザンツ帝国でも使用例があるようだ. Noble Titles Plus で私が採用した「エクサルホス」は ἔξαρχος に由来し, ex-archon, つまりアルホーンの上位者という意味になる. エクサルホスはビザンツ帝国でも使用された職位であり, 「メガスアルホン」もそのまま μέγας ἄρχων から来ている.
ヴァランゴス
北欧人のギリシャ語での呼び方である. ヴァランゴス (βάραγγος ) が単数形で, 複数形はヴァランゴイ (βάραγγοι) になる. 英語では Varangian と書かれる事が多い. この語だけの音訳なのか, Varangs とか a Varang みたいな言い回しは見た記憶がない. ビザンツ帝国に雇われた北欧人の部隊であるヴァランゴイの軍団, タグマトーンヴァランゴーン (Τάγμα τῶν Βαράγγων) が有名で, これを基にした造語がよく使われる. 本編では, Vaegir Guard という語がさりげなく出てくる. 過去作WabandのVaegir で, こちらもキエフルーシを意識したような勢力だった. そのため, このヴァランゴイの軍団に着想を得ているのだろう. (あるいは, Vaegir という名称自体がヴァリャークと音が似ているので, Vaegir 自体がヴァリャークを由来にしているかもしれない.) Modでは, 帝国によるヴランディア人傭兵部隊という設定で, Vlandikon という造語が出てくる. なお, 「ヴァランゴーン」は複数属格なので, 文法的にはなぜ主格にしないのかと違和感がある.
ヴァランゴスという語自体は, ヴィーキングに直接由来するのではなく, ラテン語の Varingus から来ているらしい. そして, ヴァランゴスがヴァリャークに派生したと考えられている.
ヴィグラ
Vigla と表記される. ギリシャ語で衛兵を意味する βίγλα が由来で, 中期ビザンツ帝国の軍団 (タグマ) の名称の1つとして記録がある.
ウェクシッルム
ラテン語の vexillum から来ている. ローマ軍で使われた軍旗で, 特に縦に布を垂らした、幡のような形状の旗であったとされ, 小規模な部隊単位の記章として使われていたようだ. ウェクシッルムの旗手はウェクシッラーリウスと呼ばれる. Vexillum というModの名前はここから来ているのだろう.
ウェクシッルムの旗手を vexillifer というと書いているところもあるが, 研究社羅和辞典では, 「ウェクシッルムを持っている」という意味の形容詞であると書かれていた. ラテン語では形容詞を名詞的に使う用法もあるらしいので, 誤りではないようだ.
ウェーレス・ウェーリテース
ラテン語の veles が由来で, 複数形はウェーリテース (velites) になる. 共和政ローマ時代の軍で, 最前線で槍を投擲していた軽装の歩兵であるとされている.
エクエス・エクイテース
ラテン語の eques に由来する. 複数形はエクイテース (equites) になる. 英文では equite になっている. 騎兵のこと.
エクサルホス
アルコンを参照せよ.
エクスクビトレス
ラテン語で excubitores という. ギリシャ語ではエクスクーヴィトレス (ἐξκουβίτορες) になるらしい. ラテン語の excubitor または excubitus が見張りという意味になり, ここに由来すると思われる. レオーンI世が創設した近衛軍団の名称である.エクドロモス
ekdromos と表記されている. いかにもギリシャ語を元にしているようだが, スペルはすぐには見つからなかった. ἐκδρομος と書けばよいのか? 複数形は ἐκδρομοι? クセノポーンやトゥーキディデースのような古代の著述家が言及しており, 総合すると, 比較的若い市民がなり, ファランクスに参加するが、トーラークスやすね当てを着けないなど, ホプリテースと比べると軽装備の者である. 状況に応じて, 隊列を離れて臨機応変に行動するらしい. あるいは, スパルタではファランクスから選抜された足の早い者たちをエクドロモイと言った, ともある. (クセノポーンをちゃんと読むべきだった. この博士論文の p.117 の注釈などに要約されている. https://discovery.ucl.ac.uk/id/eprint/10125906/1/Final%20Submission.pdf)
カタフラクト
古代ローマ帝国末期-ビザンツ帝国で運用された騎兵で, ラテン語のカタプラクターリウス (Cataphractarius) から来ている. カタプラクターリウスの語源はカタプラクテース (cataphractes) である. この単語は鎖鎧を意味する (三浦 p.199, 研究社羅和辞典). だがこのスペルから, カタプラクテースという単語自体は古典ギリシャ語由来に見える. カタフラクトを中ギリシャ語ふうに言うならカタフラクトス (κατάφρακτος) になる. なお, ギリシャ語につられてカタフラクトゥス (cataphractus) と書きたくなるかもしれない. こちらは形容詞だが, 名詞的な用法も間違えではないようだ. ギリシャ語のほうは, 形容詞と名詞両方があり, 主格だと同じスペルになる.
なお, cataphractarius が登場したのはローマ末期からなので, 私は純粋な古典ラテン語の発音から少し変化させたカタフラクターリウスという表記をよく使っている.
wiktionaryでは, カタプラクテースを「金属製の鱗で覆った防具」と書いている. https://en.wiktionary.org/w/index.php?title=cataphractes&oldid=84322705 ビザンツ時代のカタフラクトやクリーバナーリウスのレリーフは, 鱗鎧に見えなくもないので, 古代から中世の間で意味が変わったのかもしれない.
カルラディア帝国のカタフラクトの防具はローマやビザンツというよりサーサーン朝の重騎兵風に見える.
カルケウス
ラテン語の calceus で, 靴を意味する. 特にくるぶしを覆う丈のものを指すようだ.
ガレア
ラテン語の galea で, 兜のことをいう. 兜を表す単語には他にも cassis があるが, どう使い分けられていたのかは知らない. [三浦]では, ローマ人の兜をカッシスと呼び, 同時代のゲルマン人の兜をガレアとしている.
英語版ウィキペには galea という項目があるが, cassis と galea の使い分けについては言及がない.
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Galea_(helmet)&oldid=1278406684
そして日本語版はいつものように参考文献がない独自研究が展開されており「またかよ」と肩をすくめた.
グラディアートル・グラディエーター
ラテン語の gladiator. 英語風の「グラディエーター」表記のほうが知られているだろう. 剣闘士と意訳される場合も多い. 複数形はグラディアートーレース (gladiatores) だが, 創作で複数形が使われているのを見たことがない. なお「グラディエーターサンダル」はラテン語ではないが, 革紐を編んだサンダルはカリガ (caliga) で, 複数形はカリガエ (caligae) という.
クリーバナーリウス
ラテン語の clibanarius のことである. Modでは1人でも複数形のクリーバナーリイー (Clibanarii) と表記されることがけっこうある. ギリシャ語複数形風のクリバノフォリ/Klibanophori という表記も見られた. ギリシャ語では複数形は κλιβανοφόροι になる. οι に対応する表記が i になっているのは, 現代ギリシャ語の発音に則したものだろう. クリーバナーリウスの詳細はペルシャ語の「クリヴパンヴァル」も参照せよ.
クールセス
koursés と表記されていた. 謎. ギリシャ語に置き換えると κουσές か? ラテン語で伝令を意味する cursor のことか? Modでは軽装備の騎兵のことになっていた. マルチプレイに登場するコーサー (Courser) は, そのまま足の早い軍馬を意味する courser から来ている可能性もあるが, 軽装備なので curosr に由来しているかもしれない.
ケントゥリオー・センチュリオン
ラテン語の centurio に由来する. 英語化してセンチュリオン (centurion) として取り入れられているため, 英文でラテン語に則した表記が使われる例はあまり見ない. ローマ帝国軍の編制単位であるケントゥリア (centuria) の指揮官を表す. そのためしばしば「百人隊長」と意訳される. なお, centurio は「100個1組に分割する」という動詞の直説能動態一人称単数現在形でもある.
コミターテンシス・コミターテンセス
帝政ローマ後期から現れた軍の編制単位 comitatensis のこと. 複数形のコミターテンセス (comitatenses) が使用されることが多い. おそらくは随行員を意味するコミタートゥス (comitatus) から派生した単語だと思う. 英語ではlegionaryと同じように人員を表す可算名詞として使っている例をよく見るが, 編制なので人員を表す語ではないと思う. それに多分形容詞である.
ディオクレーティアーヌス帝時代に作られた編制で, 有事には国境の拠点に駐留するリーミターネウスが初動対応し, 後方に主力として控えているコミターテンシスが機動防御を行う, という運用だったと言われている. プセウドコミターテンシス (pseudocomitatensis) という亜種もあったらしい.
護民官
BLでは tribunes of the prebs という政策名がある. 公式訳はでたらめなので紹介を略する. この語は英語で, 元になったラテン語は単数形ではトリブーヌスプレビス (tribunus prebis) となり, 「護民官」と意訳される.
スカイリムの「護民官エリア」はたぶん誤訳.
「夏への扉」に登場する飼い猫の, しばしば Pete という略称で呼ばれる Petronius the Arbiter を「護民官ピート」と訳しているのも有名な誤訳かもしれない. arbiter に護民官という意味はない. 帝政ローマ初期の, arbiter elegantiae (優雅の審判者) という二つ名で呼ばれたペトローニウスにちなんでいる名前だろう.
コントス・コンタリオン
kontosと表記される. ギリシャ語の槍の一種を指す κοντός に由来する. コンタリオン (κοντάριον) ともいう. 歩兵用の槍と騎兵用の槍はそれぞれ形状が異なるが, どちらもコントスまたはコンタリオンと呼ばれていたらしい.
シグヌム
ラテン語の signum から来ている. 英語の sign の語源で, ラテン語でも抽象的な語彙だが, ここでは軍旗の一種を指す. ケントゥリアの部隊章として使われていた軍旗らしい. シグヌムの旗手はシグニフェル (signifer) という.
ズィクーリオン
Tzikourion と表記される. ギリシャ語のように見えるが, スペルは分からない. τζικουριον か? こういう名前の戦闘用の斧がビザンツ帝国で使われたという英語の話はいくつか引っかかる., 小型の戦闘用の斧らしい.
スクータトス・スクタトイ
skoutatoi, skutatoi という表記が見られた. ギリシャ語で歩兵を意味するスクータトス (σκούτατος) の複数形のスクータトイ (σκούτατοι) のことだろう. スクータトスは盾の一種であるスクートン (σκούτον) の名前から派生しているとされる. 直訳すると「盾を持つ者」となる. ビザンツ帝国時代の文献に見られる名称である. Modでは1人でも複数形風の「スクタトイ」と書かれる事が多い. 盾に由来する名称という意味では, ペルタステースと似ている. 類似語には ラテン語のスクータートゥス (scutatus) があり, さらに, 後期ラテン語では, スクーターリウス (scutarius) という語が, 従来の盾職人という意味に加え, 近衛兵という意味で使われたらしい. ライズオブネイションだったかで「スクタリ」というのがいた記憶がある. スクーターリウスの複数形のスクーターリイーのことだろうか?
skoutates という表記も見られた. ギリシャ語とラテン語を混同しているのかもしれない.
スクータトスは盾以外にコンタリオンや「スパティオン」やパラメーリオンを装備していたらしい.
スクートゥム
ラテン語の scutum から来ている. 大型の長方形の盾である. ローマ兵がいつも持っているあれ. ギリシャ語の σκούτον と似ているが, 関連があるのかは知らない.
スパタ
ラテン語の spatha に由来する. 剣のことで, 特にビザンツ帝国時代に使用された直刃の片手剣のことを指しているのだろう. だが, この語はスペルからしてギリシャ語由来である. spatha はギリシャ語のスパテー (σπᾰ́θη) が語源とされる. ギリシャ語にはスパティ(σπαθί) という呼び方もある.
スパティオン
ギリシャ語のようだが対応する語が見つからない. スパティオーン (σπαθιών) が σπαθί の複数属格であるが, なぜ複数属格になっているのか, ということでこの語ではない気がする. ラテン語の spatha のギリシャ語化したものだと紹介するサイトが見つかったが, スパタの項目で書いた通り spatha 自体がギリシャ語からの借用語であり, 逆である. σπαθί の指小形なのかもしれないが, 今のところ, リエナクター業界の英文で spathion という表現が使われている例しか観測できていないため, ギリシャ語には存在しない造語の可能性がある.
セルウス
タグマ
tagma と表記される. ギリシャ語のタグマ (τάγμα) が由来だろう. 複数形はタグマタ (τάγματα) になる. 部隊とか集団とかの意味があり, ビザンツ帝国時代には軍の編制単位としてこの語が出てくる. 文化選択時に表示される帝国の軍事制度に関する説明文は, 末期のローマ帝国の軍制を意識しているように見えるが, ゲーム本編ではタグマの1つである「ヴィグラ」の名称が出てくるなど, タグマ制を意識している. しかし, タグマの実態は時代によって変わっている. 現代ギリシャ語でも, 大隊に相当する編制単位を表す語として使わているようだ.
トーラークス
ギリシャ語の θώρᾱξ に由来し, thorax と表記される. 古い言葉なので, 古典期には θώραξ あるいは θόρραξ という表記も存在する. イオニア地方では θόρρηξ と書く. よって, 「トーラクス」「トーレークス」という表記でも良いだろう.
https://en.wiktionary.org/w/index.php?title=%CE%B8%CF%8E%CF%81%CE%B1%CE%BE&oldid=83295588
古代ギリシャの鎧を意味する. 裾や袖のない, 胴体だけの鎧だった. 典型的なギリシャ兵で連想するのは, 男性の裸体を模した革や青銅の胴鎧かもしれないが, 鱗鎧らしきものを着ている絵も残っている (アレクサンドロス大王のモザイク画とか).
派生語にリノトーラークス (λινοθώρᾱξ) があり, 直訳すると「亜麻の鎧」を意味する. 現存していないため, 本当に亜麻で作られていたのか, どういう製法だったのかははっきりしていないようだ.
トクソテース・トクソタイ
ギリシャ語の τοξότης に由来する, 射手のこと. トクソン (τοξόν) が弓を意味する. だいたいみんな複数形のトクソタイ (Toxotai) という表記を使う.
ドラゴンの旗
メインクエスト前半の重要アイテムである. 英文では Dragon Banner となっており, 日本語版では「ドラゴンの旗」というまるで風情のない訳が当てられている.
英語のドラゴンは, ラテン語のドラコー (draco) に由来し, ドラコーはギリシャ語のドラコーンに由来する. ここでのドラゴンは, 手足も羽根もない, 大蛇のような怪物として描かれている. その起源ははっきりしない. 古代にダキア人が戦場で目印に使ったとされ, 複数のレリーフや文献に記録が残っている. 鯉のぼりのように吹き流している様子が彫られている. 一方で, ダキア人独自のものではなく, 元を辿ればサルマティア人の意匠だという説もある. これがローマ軍にも取り入れられ, 軍旗として使われていたようだ. BLの重要アイテムである例の軍旗の外見は, これに着想を得たのだろう.
この意匠はドラコーと呼ぶが, ドラコーを象った軍旗を特に何と呼んでいたのかはわからなかった.
それにしても「ドラゴンの旗」という名前は格好が悪すぎるので, 私の校正Modでは「竜軍旗」としておいた. だが, 名前を多少かっこよくしてもあの性能の低さはいかんともしがたい. あちこちで「ていうかドラゴンバナークソ弱くね?」と散々に言われている. もっとも, 使いこなせない者は, 「本当の意味でカルラディオスの後継者ではなかった」ということだろう.
トリアーリウス・トリアーリイー
ラテン語の triarius に由来する. 英文では複数形のトリアーリイー (triarii) が使われていた.
ハスタートゥス・ハスターティイー
ラテン語の hastatus に由来する. 英文では複数形のハスターティイー (hastatii) が使われている. 共和政ローマ時代に前衛で槍 (hasta) を投げていた兵種である.
バッリスターリウス
ラテン語で大弓射手を意味する ballistalius のこと. 古代ではゲーム内で登場するバリスタのような大型の弓を操作する兵のことだったが, 中世ではバリスタはクロスボウのことを表すようになったので, バッリスターリウスもクロスボウ兵を指すようになった. バッリスタにはアルクバッリスタ (arcuballista) という別の呼び方があるため, arcuballistarius と書かれることもある.
パラーティーヌム
ラテン語の palatinum だろう. 直訳すると「宮殿」となる. 文脈によっていろいろな用法がある. modでは, 兵士名のあとにつけているものが多数ある. おそらくは「宮殿の警備兵」とか「近衛軍団」みたいなニュアンスで使っているのだろう. だが, 文法上正確なのか怪しい.
コミターテンシスの一種にも, palatini と呼ばれたものがあるらしい.
パラメーリオン
英文では paramerion と表記されている. ギリシャ語の παραμήριον に由来する. ビザンツ帝国で使用されたサーベル様の反りのある片刃の剣のことをいう.
ピールム
ラテン語の pilum から来ている. 複数形はピーラ (pila). ローマ軍の使用していた投擲槍のことである.
ヒッペイス
ギリシャ語の ἱππεῖς から来ているのだろう. これは複数形で, 単数形はヒッピュス (ἱππεύς) となる. 馬を意味するヒッポス (ἱππος) に由来する. 騎兵のことである. おそらく古代アッティカ方言風の表記だろう
ヒッポトクソテース・ヒッポトクソタイ
複数形風に hippotoxotai と表記される事が多い. ヒッポトクソテース (ἱπποτοξότης) は, 馬を意味するヒッポス (ἱππος) + 射手を意味するトクソテース (τοξότης) で弓騎兵のことをいう.
ピロス
ギリシャ語の πῖλος で, つばのない帽子を指す. 同様の形状の兜もピロスと呼んでいたようだ.
BL本体にも登場する武器で, pugio と表記されている. ラテン語で短剣のことをいうプーギオー (pugio) だろう. Modでは, ピールムは複数本装備するためか複数形のピーラに名前を変えているものがあったが, プーギオーが複数形になっている例は見ていない. ラテン語の bucina から来ている. ブッキナ (buccina) という表記もあるらしい (https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Buccina&oldid=1264177693). 主に角笛や, それに類する湾曲した管楽器を意味する. ここでは, 軍の号令に使われた管楽器のことを指しているのだろう. 奏手はブーキナートル (bucinator) またはブーキヌス (bucinus) という. 類似の単語に, コルヌー (cornu) あるいはコルヌム (cornum) がある. これらも角笛あるいは渦を巻いた形状の管楽器を意味し, ブーキナとの明確な使い分けはわかっていない. 他にはほぼまっすぐなトゥバ (tuba) という管楽器がある. とあるmodでは, bucium という表記がなされていた. bucina の複数形は bucinae である. ルーマニア語では長い角笛を bucium と呼ぶらしいので何らかの関係がありそうだが, ラテン語の辞書では見つからなかった.
プーギオー
ブーキナ
ブケッラーリウス・ブケッラーリイー
ラテン語の bucellarius のこと. 本体では複数形のブケッラーリイー (bucellarii) が使われている (辞書には載っていなかったが, おそらく第II変化名詞だろう). ブチャラティではない. 末期ローマ帝国で運用された傭兵あるいは貴族の私兵のこと. ギリシャ語風に表記するならブーケッラリオス (βουκελλάριος) になるだろう. 軍用糧食である乾パンあるいはクッキーのブケッラ (bucella) から派生した単語とされる. BL本体の日本語版では「ブケラリイ」と表記されている. ここに限らず日本語版の固有名詞の表記は一貫性がなくなんらかの方針があるようにも見えないので1つ1つあげつらっていてはきりがないが, 中途半端な表記である.
正規兵ではないから, 全員が弓騎兵で統一されていたわけではないだろうが, 練度や戦闘能力の高い者たちだったであろうから, 騎兵が主体だったのだろう.
プリーンケプス・プリーンキペス
ラテン語の princeps に由来する. 英文では複数形のプリーンキペス (principes) が使われている. ニンジャや帝政ローマの元首のことではなく, 共和政ローマの軍制での兵種を指す.
プルムバタ・マルティオバルブルム
ラテン語の plumbata のことだろう. 鉛の重りのついた投げ矢で, 末期のローマ軍で使用された投げ矢とされている. plumbum は鉛を意味する. マルティオバルブルム (martiobarbulum) は複数形のマルティオバルブリー (martiobarbuli) のみがmodの用例にあった. De Re Militari やストラテギコンに言及があるらしい. プルムバタとマルティオバルブルムの決定的な違いはよくわからない.
プロドロモス
Prodromoi という表記があった. ギリシャ語のプロドロモス (πρόδρομος) の複数形のプロドロモイ (πρόδρομοι) のことだろう. 先に (πρό) 走る (δρομ) という語が由来で, 先駆者という意味になる. 「斥候」とか「前衛」くらいの意味で使われているようだが, 実際にギリシャ語で軍事用語として使われてたことがあるのかは分からない.
プロノイア
Pronoiar, Pronoia, Pronoiarios という表記が見られた. ビザンツ帝国のブロノイア (πρόνοια) 制から着想を得ているのだろう. 封建領主的な性格のある軍事制度である. プロノイアという語自体は, 貴族に与えられた土地のことを指す. Pronoiarios はギリシャ語の情報が見つからないので, たぶんプロノイア制度下で動員された兵士を表す非ギリシャ人による造語だろう.フンディトル
ラテン語の funditor から来ている. 投石兵のこと. 英語で言う slinger のほうで, もっこのような器具を使って石を投げる者を意味する. カタプルタやオナゲルのような重機ではない. 複数形はフンディトーレース (funditores) になる. なぜか複数形が使われているのを見たことがない.
ヘタイロス・ヘタイロイ
Modでは companion とか companion cavalry とか書かれていた. ギリシャ風の勢力で使われていたので, ギリシャ語のヘタイロス (ἕτᾰρος) のつもりで書いているという解釈でよいだろう. 複数形はヘタイロイ (ἑταῖροι) になる. ホプリテースと同じで、英語でも日本語でも, 古代風に第1音節をH音で表記していることが多い. 辞書的な意味は英語の companion と同じであるが, この文脈ではマケドニアのアレクサンドロス大王の側近の騎兵部隊を意図しているということだろう.
ペルタステース・ペルタスタ
peltasta と表記されている. ギリシャ語の πελταστής に由来する. 複数形は, 古典期ならペルタスタイ (πελτασταί)となる. ラテン語でもペルタステース (peltastes), あるいはペルタスタ (peltasta) と書かれ, 複数形はそれぞれペルタスタエ (pelstastae) とペルタスティ (peltasti) となる. Modでは peltasta という表記が多かったが, 英語では通常 peltast と表記されるようである.
古代ギリシャでは投擲槍で武装した軽装備の歩兵のことである. 彼らの持っていた小型の盾をペルテー (πέλτη) といい, ラテン語ではペルタ (pelta) となる. ビザンツ帝国の時代にもペルタステースと呼ばれた兵種が存在したが, 武装や役割が異なる可能性がある.
ところで, この機にウィキペディア日本語版の「ペルタスト」の記事 (https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%83%88&oldid=101350773) を確認したところ, 最初の一文が以下のようになっていた.
最初のカナ表記は英語風で, その次がギリシャ語の複数形風である. 一方でギリシャ語とラテン語の表記はどちらも単数形で, 一つも一致していない. ウィキペディアの見出し語をどの言語にそろえるべきかというルールは存在しないらしいので, 英語由来と思われるペルタストという表記を持ってくるのはいいとしても, その後に紹介する原語の表記が全く対応してない. 書いていて違和感を覚えなかったのだろうか? なお, いつも通り記事の本文は参考にしていない. ウィキペディア日本語版は, 見出し語と原語の表記すら対応していない (外国語をかな表記で表せないとかそういうレベルの問題ではなく, 根本的に別の単語や言語になっている) ものがしばしば見られるため, 参考にならない事が多い.
ホプリテース・ホプリタイ
古代ギリシャの歩兵 οπλίτης のこと. 装備していた大型の盾のホプロン (ὅπλον) に由来する…と俗に言われているが, これは誤りである. ὅπλον は武器や道具全般あるいは装備といった意味の言葉であるので, οπλίτης は「重装備の兵士」「完全武装の兵士」くらいの意味になると考えられる. そして, ホプロンとホプリテースは, 現代ギリシャ語でも武装と歩兵という, ほぼ同じ意味で使用されている. よって, 「ホプロンは盾などの装備を意味する」なら問題はないが, 「盾のことをホプロンという」はミスリードな説明になり, 「盾を意味するホプロンからホプリテースという名前になった」は完全に誤りになる. 英語では hoplite と表記され, 複数形は hoplites になる. ホプリテース (hoplites) はラテン語での単数形の表記でもある. 日本語では原文が hoplite でもなぜか複数形風の「ホプリタイ」と書かれる事が多い. 第1音節をH音にするのは古代のアッティカ方言であり, それ以外の地域や時代では「オプロン」「オプリテース」になる.
ちなみにあのアイコニックな大きな円形の盾を表す語には「アスピス」があり, 特定の形状の盾を意味するギリシャ語の語彙は他にいくつもある. 例えば同じ古典期なら「ペルテー」がある.@>
ウィクショナリーの英語盤では ὅπλον の意味に「武器, 特に盾」とある https://en.wiktionary.org/w/index.php?title=%E1%BD%85%CF%80%CE%BB%CE%BF%CE%BD&oldid=80928210
だが, ギリシャ語版にはその記述は存在しない https://el.wiktionary.org/w/index.php?title=%E1%BD%85%CF%80%CE%BB%CE%BF%CE%BD&oldid=6635260 この問題は日本語で検索しても見つからないが, 英語ならあちこちのフォーラムで関連した議論が見られるし, 論文にまでなっている (https://www.jstor.org/stable/639557). しかも1996年なのでかなり古い. この誤解は日本語圏だけのものではなかったらしい.
メナウリオン・メナウリアトン
menavlion と表記される. メナウリオン (μεναύλιον) はビザンツ帝国で使用された長い槍のことを言う. メナウリオンを持つ兵はメナウラトスと呼ばれるが, ゲーム本編ではメナウリアトン (menavliaton) と呼ばれる. 中途半端にυにvを当てている. BLで登場するメナウリオンはあまり長くないため, 肉薄されても使いやすい.
ランケア
ラテン語の lancea から来ている. 槍のことである. 英語の lance の語源だろう. 英語の場合は騎兵の持つ長い槍だが, ラテン語ではより広い使われ方をされているようである. 軽く小型の投擲用の槍も, 騎兵の槍もランケアと呼ばれることがあったようだ.
リーミターネウス
アクリテースを参照せよ.
レガートゥス・特使
BLでは使われていないが, 誤訳が有名なのでついでに紹介する. 英語の legate の表記で, スカイリムでは「特使」と訳されていた. 辞書的には誤りではないが, この語はラテン語のレガートゥス (legatus) に由来する. この語も「派遣する」という動詞に由来する一方で, 軍の指揮官の役職名に使われることが多い. スカイリムでは各地の帝国軍の野営地に legate の肩書きのついた, 他より装備の良いNPCが1人ずついたことから, ここでは「軍団長」くらいの意味で使われていた可能性がある.
レギオン・レギオーナーリウス
英単語の legion で, いわゆるローマ帝国の軍団のことを指す. ラテン語では単数形がレギオー (legio) で, 複数形がレギオーネース (legiones) になる. BLでは軍団の兵という意味で legionary という語が使われていた. こちらに対応するラテン語はレギオーナーリウス (legionarius) になるだろう. (アレニコス帝がレギオンを解体したという設定はどこへ行ったのか…)
ロハーゴス
Locaghos と表記される. ギリシャ語の λοχᾱγός に由来する. Modで部隊長くらいの意味で使われている例があった. ずっとローマ字表記に従って「ロカゴス」だと思っていたが, ギリシャ語のスペルを確認したらだいぶ違った.
ローリーカ
ラテン語の lorica のことで, 殻とか鎧という意味がある. ローリーカセグメンタータ (lorica segmentata) は鉄板を貼り合わせて作られた鎧で, ステロタイプなローマ軍団兵像でよく見られる鎧である. 鎖鎧はローリーカハーマータという. ローリーカスクアーマータ (— squamata) は布に鱗状の小片を縫い付けた防具である.
ローリーカムースクラ (ムスクラタ)
アウグストゥスの彫像などに見られる, 筋肉の隆起した人間の胴体を模した胴鎧のこと, なのだが, これに対応する正確なラテン語のフレーズを見つけられなかった. 例えば英語版ウィキペディアの Muscle cuirass の項目では, ラテン語で lorica musculata であるとしつつも, これは当時の呼び方ではないし, 辞書にも存在しない語だと注釈が入っており, 一部の再現活動家の造語である可能性を示唆している. 私もこの語を辞書から見つけられなかった. squamata とか segmentata とかがあるので, 手癖で語尾を ta にしたのかもしれない.
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Muscle_cuirass&action=history
[三浦]はこの種の鎧の名称を lorica muscula であるとしている. しかし, 筋肉を意味するラテン語は musuculus であり, 格変化で musucula になったりしない. lorica musculi か, lorica muscularis, lorica musclosus とかなら文法的に不自然ではなさそうだが, 一次史料を確認できないので結論を出せない.

英語あるいは古フランス語
ゲルマン語由来のものも多い.
アーミングソード
英文では arming sword になる. 逐語訳するなら「軍用剣」となる. 主に中世盛期から後期に騎士階級が佩いていた剣のことをこう呼んでいるので, 私は「騎士剣」と訳している. knightly sword という別名もある. いずれも後世の研究上の分類区分であり, 当時は様々な名前で呼ばれていた. BLでは, 片手剣としてのみ登場する. この形状は中世後期に多く, この時期に登場したより長い剣が, いわゆる「ロングソード」であり, 「ロングソード」のなかでも後世の人間から中途半端な長さだと思われたものが「バスタードソード」と呼ばれる.
一方で, 歴史用語としては全く別の意味になるため, 混乱が発生する. 16世紀頃にはドイツ語で「騎兵の剣」「騎士の剣」を意味する “reitschwerte” という語が使われた (Oakeshott B, p.133). これは大型の剣であり, むしろ現代の創作で頻出する「ロングソード」や「ツーハンデッドソード」像に近いものである. さらに言えば, この語は剣の長さだけに着目している. 刀身が幅広く斬撃に適した剣もこう呼ばれるし, 同じくらいの長さでより細いレイピアもまとめてこう呼ばれていたという. さらに, この語は, 現代の他の創作や英語のリエナクトメント関連の文脈で使われる riding sword の語源かもしれない.
アヴァンギャルド・ヴァンガード
英文では “Vanguard” だった. 尖兵と訳されることもある. フランス語の “avant-garde” が語源で, 英単語にそのまま変換すると, “advanced-guard” となる. 現代では「前衛芸術」という意味で使われることが多いが, 本来は軍事用語だった.
ウォーソード (あるいは「グレートソード」)
“War Sword” という名称の片手剣として登場している. 由来が不明なので私は「戦剣」と意訳した. 前作Warbandおよび初代には, “Sword of War” という名称の両手用の剣が登場している.
13-14世紀ごろの英語の詩や年代記には, “Grete Swords”, “Grete War Swords”, “Swerds of Werre” という語が使われ, フランス語では “epée de guerre” という語が使われている. これらは 従来の片手でも十分扱えるような長さの剣よりもよりもかなり大型で, 刀身は81cmから 101cm の範囲になり, ほんとうの意味で両手で扱う大きさの剣となった. これらの語は, ドイツ語の “schlachtschwerte” が元になっているのではないかとも言われている (Oakeshott A, p.95). 他の創作でも, “war sword” とか “sword of war,” そして "great sword" といった名称の大型の両手剣がよく出てくるのは, これが由来かもしれない.
しかし, これに少し遅れて, いわゆる「ロングソード」が登場する. これらと同程度か, さらに長いものもある. 創作ではしばしば「グレートソード」が「ロングソード」よりも重厚長大な剣として登場するが, これは歴史的には正確でないことになる. むしろ, ロングソードよりやや短いものは現代人によって 「バスタードソード」認定されてしまう可能性すらある.
さらに時代が下ると, 「グレートソード」や「ロングソード」よりも大型の剣が登場した. 16世紀頃のドイツでシュラハトシュヴェーアト (Schlachtschwert) という剣が使われた. 古い時代なので表記が一定しないため, 現代語のスペルにした. 実質上記の schlachtschwerte と同じ語である. これは, 現代の創作で「ツヴァイハンダー」と呼ばれている, 「ランツクネヒトの持っている巨大な剣」像で知られる武器のことである. 後述の Rüther など現代の専門家の間では, Schlachtschwert をそのまま英語に置き換えた “battle sword” という呼び方が好まれているようだ. この種の剣は, 全長が140cm以上のもの*1で, 前時代のウォーソード/グレートソードやロングソードよりも, さらに大きい.

さらに細かい事を言うと「両手剣」とされる大型の剣の間にも, 大きさや重量にかなり幅がある. 形状だけでなく登場する年代や地域にも差がある. 一口に両手剣と言っても, 大きさの違いで扱い方も違いが生じている可能性がある. いわゆる「ツヴァイハンダー」, 正確には Schlachtschwert と呼ばれる剣は, 他の両手剣と比べると大きさだけでなく形状も独特である. そのため, 現代の剣術家の Bjorn Ruther は, この剣は他の両手剣とは全く違う使われ方をしており, Giacomo Di Grassi などの既知の文献に書かれている両手剣の用法とは異なる, という仮説を主張している. (Rüther)
16世紀の「ツヴァイハンダー」改め「シュラハトシュヴェーアト」のレプリカを使った実演動画, この剣は 210cm, 6 kg あるという.
だが, BLにでてくる war sword は片手剣であり, 特別長くもない. 謎.
エキュエ
ecuyer と表記される. フランス語の écuyer から着ているのだろうか? 騎兵や従士といった意味らしい. ラテン語の eques が語源なのかと思ったら, scutarius が語源らしい.https://en.wiktionary.org/w/index.php?title=%C3%A9cuyer&oldid=83708255
オーヴァーロード
英語の overlord はいくつかのModで使われている. 半分悪ふざけ感があるが… 現代英語なら「天帝」「上帝」「大君主」などと意訳されることが多い. 中英語に起源のある語で, over + lord で, 領主より上位の存在, という意味になる. 現代ではもっぱら「神」や「絶対的な支配者」を暗示する用法だが, 歴史的には封建領主を意味していた. しかし, 多くのModではこの用法ではなかった.
スカイリムのヘイムスカーの演説では, 「大君主」と訳されていたが, Elven overlords という文脈なので, 「エルフ(サルモール)の暴君ども」とか, 侮蔑的あるいは皮肉的なニュアンスではないだろうか.
オウルパイク
英語の awl pike であり, owl ではない. awl は錐のことで, 錐のような細い穂先のあるパイクである. 円盤状の鍔があるのも特徴である. おそらくは深く刺さり過ぎないためのものだろう.
現実ではこのような形状の武器が現れるのは15世紀から16世紀の間である.
[三浦]は, ドイツ語のアールシュピス (ahlspiess) という名称で紹介している.
カスク
casque はフランス語でスカルキャップ状の簡素な兜のことを指す. BLの無理やりな用法の訳し分けに苦労した私が苦肉の策で使った. なお, casque の語源はラテン語のカッシス (cassis) である (三浦 p.325).
鎖鎧
英文では mail armor, chainmail, chain mail, mail, maille (フランス語風) など様々な表記がある. 名称が重複して混乱する場合を除いて, 全て「鎖鎧」と表記している. なお, 「チェインメイル/chain mail」というのは19世紀頃に発生した造語であり, 歴史的な用語ではない. そもそも, chain も mail もどちらも「連結したもの」という意味なので, 「武士の侍」的な表現になっているし, 迷惑メールみたいに見える. 逆に blackmail を「黒い鎧」と訳す人はいないだろう. maille であれば, 中英語ではかろうじて単体で鎖鎧という意味での用例があるようだ. では, この用例を現代に復活させるなら, やはり chainmail という語は「武士の侍」や「馬から落ちて落馬する」のような言い回しになってしまう. そして, mail を鎧という意味で誤用する例は既にかなり普及してしまっている.
ただし, maille の指す範囲はかなり広い. maille=鎖鎧という用例がある, といっても, 例えばプレートアーマーが発展した15世紀以降では, 首や腰や脇や肘など, 可動域を確保する必要のある部位にしか鎖が使われなくなる. 胴体を覆う鎧ではなく, そういった小さな防具も maille と呼ばれることに注意する必要がある.
BLの防具の名称では, 単に mail という語だけが使われて意味不明になっているものがいくつかある. 私の訳では, ゲーム中で使われる3Dモデルを確認したうえで, 「鎖鎧の略語」あるいは「maille の誤記・表記揺れ」と解釈して訳している. chain mail が鎖鎧なら, 単に mail と書く人は鎖と鎧のどちらを意味して書いたつもりなのだろうか. 理解しがたい.
私は以前は 「鎖帷子」を訳語に使っていた. [三浦]でもこの用法が見られる. しかし, 日本の鎖帷子は布に鎖を編み込んだもので, ちょっと雰囲気が使うから今は使っていない.
メダロットに登場した「ブラックメイル」もこの誤用の系譜だろうか?
mail shirt という表記もある. 3Dモデルは丈が短く, 短い袖がついている鎖鎧であることが多い. 鎖シャツと訳している.
なお, 鎖鎧を意味する単語は歴史的にいくつもある. 英語のホーバーク (hauberk) およびその語源となったフランス語のオーベール (hauberc), ローリーカハーマータ, カタプラクテースなど, いろいろある.
サクス
saex と表記される. [三浦]はドイツ語に由来するザクス (sax) という表記を採用している. 古英語あるいはより古いゲルマン系言語に由来する言葉のようだ. 小型の剣やナイフを指す. 形状は様々であるが, 逆刃刀めいて, 刀身の背にみえる側に刃がついたものが特徴的であり, 創作でもよく出てくる.
BLの日本語版では「スクラマサクス」と表記されている. ウィキペディアの日本語版の見出し語も「スクラマサクス」になっている (記事本文は一切出典の表記がなかったので参考にしていない).
古いゲルマン系言語で「傷をつけるナイフ」という意味の scramasax という呼び方もあるようだが, 原文で saex となっているものをそのように改変する意味がわからない.
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Seax&oldid=1283628979
やっぱり機械翻訳に放り込んで出てきた文字列をよく確認せずに使ってるんじゃないだろうか…
ショートソード
short sword と表記される. 歴史的には, 16世紀末のイングランドの剣術家ジョージ゠シルヴァーの著作 “Paradoxes of Defence” に “shorte Sword” や “short Sworde” という表記が見つかる. しかしながら, 彼の言うショートソードは, 刃渡りが95センチ程度のものであり, かなり大きい. 当時普及していたレイピアや, それ以前のいわゆるロングソードと同程度か, わずかに短い程度である. 全然短くない.
一方で現代の創作では, 時代区分に関係なく, 単に片手で扱える形状の剣, 例えば中世盛期「騎士剣」や, 北欧人の使っていたより短い片手剣もすべて「ショートソード」と呼ぶ傾向にある.
BLでも後者の用法が見られる. 「短剣」と訳すと, より小さいナイフのことだと誤解されそうなので, 私はこの用法の場合は「片手剣」と訳している.
(たぶん, 現代の創作での刀剣の名称は, 19世紀のものと, 20世紀に入ってからのOakeshott の仮説が混合されたものなのだろう. そしてそれらは, 過去の歴史的な用法や, 最近のHEMAでの研究動向を反映していないためしばしば矛盾が生じる.)
セイン
古英語の þegn から来ている. 現代語では thane になる. 従士のことをいう. 明らかに北欧語が由来であり, アイスランド語にも同じ語がある. そのためヴランディアとストゥルギヤでかぶりやすい.
セルヴェリエ
英文では cervelliere になっている. フランス語の cervelière の借用語だろう. ラテン語の cerebrum が語源とされている. 辞書では大脳とあったが. [三浦]は髑髏のことだと書いている. 中世盛期に使用された, 半球状のスカルキャップのような兜である. 日本語版では「サーブレア」と表記されていた.
スパンゲンヘルム
英文では spangenhelm. 古代末期から中世初期にかけての, 小型の鉄板を貼り合わせて作った兜のことをいう. この語が当時使われたものなのかは言及がない. 様々な時代や地域で使われたものをまとめてこう呼んでいるみたいなので, 歴史的な呼び方ではなさそうである. ウィキペディアの英語版記事なんかもドイツ語の情報をそのまま引っ張って来ただけのような気がする.
なお, BLでは spangenhelm の他に segmented helm というアイテムもある. 意味の観点でも, 3Dモデルの観点でも, 同じに見える. そして後者は日本語版では「円錐状の兜」というどうしてそうなったのか理解困難な訳になっている. 文字列と3Dモデルのどこをどう見たら円錐が浮かび上がってくるのだろうか…
[三浦]では, galea というラテン語の名称でも紹介している. しかし, galea がこの形状の兜を指す語ではない可能性がある.
タージ
Targe と表記され, バッタニアの兵士が持っている小型の円盤状の盾がこう呼ばれている. 形状や意匠を見ても, 本来はスコットランドで16世紀ごろから使用されていた盾であろう.
なお, targe という語は, この種類の盾以外にも馬上槍試合で使用される盾の名前にも使われる. このタージの典型的なものは, 槍を突き出しやすくするための切り欠きがあるのが特徴である. 時系列で言えば, こちらのほうが先に登場していることになる.
馬上槍試合用のタージの例: Shield for the Field or Tournament (Targe) - German - The Metropolitan Museum of Art

ツーハンダー・両手剣
two-hander という名称の両手剣が登場する. [Oakshott B, p. 146] でこの表記が見られ, 15世紀末の英語の文献に, “twahandswerd” という語が現れていることを紹介している. これが語源なのか, 現代ではツーハンダーをはじめ, two hand sword とか two-handed sword とか, 複数の表記がある. スキル名には, two-handed という表記が使われている. 過去作の Warbandや初代には, Two Handed Sword という武器が登場している.
加えて, ドイツ語由来の「ツヴァイハンダー」 (Zweihänder) という語も創作でよく使われる. これは「両手持ち (の剣)」を表す一般名詞であり, (少なくとも) 現在では, 特別な形状でなくとも両手で扱う剣ならば全てこの名前で呼ばれうる. しかし, こちらは歴史的に使われた言葉でなかった可能性があり, two-hander の逆輸入かもしれない. なお, Wikipediaのドイツ語版では, 他国語では「ツヴァイハンダー」/Zweihänderと書いている記事の見出し語が, レネサンスビデンヘンデル (Renaissance-Bidenhänder), つまり, 「ルネサンス期の両手剣」になっている. Bidenhänder は Zweihänder とほぼ同じ意味の言い換えである. もちろんこれも歴史的な用語ではない.
現代の西洋武術 (HEMA) 業界では, いわゆるロングソードと両手剣は異なるものとして扱う事が多い. 大きさが違うため, 文献に残っている動作を実践できないことが多いためだ. 15世紀の De Arte Gladiatoria Dimicandi (MS Vitt.Em.1324) には 「柄頭は腕より下にあるべきだ」とあることや, 記述のある動作の多くを実践しやすいことから, 胸の高さ程度の長さの剣がロングソードと見なされる傾向にある. (例えば Guy Windsor のブログ https://guywindsor.net/2012/08/size-matters-longsword-length/#sthash.r8lXaCos.dpbs を参照せよ)
いずれにせよ, BLの時代設定と比べると少し不自然である.
「ウォーソード」の項目も参照せよ.
パヴィス
英語の pavise のことで, 中世に使われた重厚で大型の盾である. 英語以外でも類似のスペルの単語がヨーロッパの各言語に存在する. そのため, 英語由来でなさそうだが, 正確な語源はまだ調べていない.
大型の盾を背負ったり隠れたりしながらクロスボウを装填する兵士や, 密集させながら槍を突き出す部隊の絵が残っているが, これらが全てパヴィスなのかはわからない.
これより小型のものや, 形状の異なるものでもパヴィスと呼ばれる盾がある.
Modの1つであるRealistic Battle Mod (RBM) では, このような用法を考慮してか, 背負っている状態の盾にも矢弾の防御効果をもたせるオプションがある. しかし, これ以外のタージのような小さく軽い盾ですら, 一切衝撃や反動もなく矢を防げてしまうようになってしまう. オプション方式にするならこっちをなんとかするべきのような気がする.
バスタードソード
bastard sword. hand-and-a-half sword とか one-and-a-half-handed sword という別名もあり, 「片手半剣」と意訳されることがある. 造語. 造語である. 歴史的にこれらの剣はそのように呼ばれていない. バスタードソードは存在しない.
中世盛期以降に長剣, いわゆる「ロングソード」が登場した. 長剣は従来の剣より長いので長剣と呼ばれている. バスタードソードという語は, 長剣というにしては長さが中途半端だと思った人が勝手にそう呼んでいるだけで, 明確な区分はなく, この武器に特有の使い方があったという証拠も見つかっていない. 当時の文献にも, この名称はほぼ見られない. これらの用語は19世紀以降に発生した. しかし, 未だに各地の博物館でも bastard sword という名称で剣が展示されていることがある. 以前 Dreynevent に参加したときも発表していた研究者が, 「その博物館では『バスタードソード』として展示されてます」と, この名称がおかしいのはみんなわかってるよね? と暗黙の了解を求めるような言い方をしていた. *2
かりに「バスタードソード」が存在するとしても, 古代末期から中世盛期くらいの雰囲気のBLの設定とは, 登場する時期がすこしずれている気がする.
歴史用語としては, 15世紀のフランス語の文献に épée bâtarde という語が登場し, これが bastard sword の語源だと考えられている. (Oakeshott A, p.127). しかし, しかし, 大きさに関する明確な規定はなく*3, 単に従来の剣より大きいものを指している程度のことしか推察できない (Oakeshott B, p.129). 「ロングソード」や「ウォーソード」と呼ばれているものとのはっきりした区別はつかない. Oakeshott はXV型の剣の解説で, 「バスタードソード」という語に言及している. 確かにこの分類では片手用の剣と両手用の中間のような, 中途半端な長さの刀身と柄を持つ例が多く挙げられている. しかし, この著作でも書かれているように, 当時の剣の長さは個体差が大きい. 単に長さだけに着目するならば, 他の分類と重複するものもあるし, 持ち主が実際にどう使っていたかまでは特定できない. 片手剣というには少々長いが, 一方で柄が短く, 俗に言われている片手持ちと両手持ちを切り替えられられるような形状でない剣も含まれている. というわけでやはり「バスタードソード」は造語である.
バネレット
本体では banner knight と表記されている. たぶん kngiht banneret あるいは chevarier baneretのことだと思う.
フィルドマン
fyrdman と書かれる. 古英語の頃からある語彙で, fyrd (field) - man と分解できる. 戦士のことと解釈できる.
ホーバーク
英語の hauberk, 鎖鎧のこと. BLおよび過去作では, 北方勢力の丈の長い鎖鎧がよくこの名前で呼ばれている. フランス語のオーベール (hauberc, haubert, 古フランス語と中フランス語で異なるらしい) の借用語とされている. chainmail など, ほぼ同じ意味で使われているが, アイテムとしては別物になっている事も多い. よって, 私は hauberk は「ホーバーク」と訳し, それ以外は鎖鎧とかに訳して区別している. mail hauberk という表現もよく見るが, hauberk 自体が鎖鎧のことなので, むしろ mail でないホーバークとはなんだ? そしてこの場合の mail は鎖という意味なのか鎧という意味で使ってるのかどっちだ?と疑問だらけになる. チェーンメール誤用問題は根深い.
たまに「ハウベルク」という謎表記を見かける. 古フランス語由来らしいので, そんな感じの発音だった時代があるのかは怪しい. 古英語の語ならそう読めるかもしれないが, この語が使われ始めたのは中英語の時代の可能性がある. たぶん機械翻訳やスマッホの予測変換に操られてしまったやつのしわざだろう.
マンアットアームズ・平民騎士
英文では man-at-arms と表記されているが, 私は「平民騎士」という用語を常に対応させている. 「マンアットアームズ」は中世後期に定着した単語で, 元はフランス語を経由して, ラテン語のミーレス゠グレガーリウス (miles gregarius) が由来と考えられている. いずれも防具を装備した重武装の兵士で, よってたいていは乗馬している者を表す. MB2は古代末期か中世盛期頃の雰囲気があるので, ミーレスグレガーリウスを指しているとみなして「平民騎士」または「平民騎兵」としている (中世だけを通し見ても,「騎士」の定義は時代によって異なることに注意する). なお, 貴族階級の場合はミーレス゠ノビリス (miles nobilis) になる.
ラメラーアーマー
英語の lamellar armor のことである. 私はBLでは「薄片鎧」あるいはまれに「小札鎧」と訳している. 金属や革の小片を編んで作った鎧のことをいい, 日本の具足の多くもラメラーアーマーの一種とみなせる. しかし, 英国では使われていないため, この種の鎧が現役だった時代の言葉ではない可能性がある. ゲーム中でも, ストゥルギヤかクーザイト, それから帝国のカタフラクトの一部しか使っておらず, ヨーロッパでは古代の中東や中央アジアの影響を受けた地域で主に使用されている. lamellar armor という語は, おそらくラテン語のラーメッラ (lamella) から来ている. BLでは用例がないが, laminar というよく似た語もある. こちらもラテン語のラーミナ (lamina) が由来で, どちらもひだとか層板とかいう意味で使われる.
よく似たスケールアーマー (scale armor) は, 小片を編み上げたのではなく小片を裏当て布に縫い付けた防具を言うらしいが, 現代の後付けの分類なのでどっちに分類すべきか曖昧なものもあるだろう.
ロンデルダガー
BLのテキストデータには存在するが, ゲーム内で見かけた記憶がないため, 没データかもしれない.
円盤状の鍔をもつ短剣が14-15世紀に使用され, ドイツ語でシャイベンドルヒ (Scheibendolch) と呼ばれる. 英語ではこれを訳したロンデルダガー (rondel daggar) で呼ばれた. より現代的なディスクダガー (disk dagger) という呼称もある.
なお, [三浦]は rondele という表記をしている. 類義語もすべてこの表記だったので, 誤植ではなさそうだが, 出典がわからなかった.
ミセリコルデという名前で呼ばれることもある. フランス語の miséricorde が由来だろう. シャイベンドルヒが形状に着目した名称であるのに対し, こちらは用途に着目した名称である. よって, シャイベンドルヒ以外の形状でもミセリコルデと呼ばれうる.
刀身の多くは刃がなく, 三角錐に近い形状のため, 刺突に特化した剣だと考えられる. しかし, まれに刃を持つものもある. 当時の絵画では武装した兵士と市民のどちらにも, 装備している姿を見られる.
その他
メッツァンヴァルチャ
metsänvartija. スオミ語らしい. レンジャー, 森林警備員くらいの意味らしい.
謎
由来不明の謎造語.
スカル
なにこれ.
参考文献
- [三浦] - 三浦権利 (2000) 『図説西洋甲冑武器事典』 柏書房
- [研究社羅和辞典] - 水谷智洋 (2015) 『羅和辞典改訂版』 研究社
- [Rüther] - Bjorn Ruther (2021) The use of the German battle sword in the late 16th and early 17th century, https://hroarr.com/article/the-use-of-the-german-battle-sword-in-the-late-16th-and-early-17th-century/
- [Oakeshott A] - Ewart Oakeshott Records Of The Medieval Sword
- [Oakeshott B] - Ewart Oakeshott European Weapons And Armour: From The Reneissance To The Industrial Revolution
- [Withers] Withers, Hervey J S The World Encyclopedia of Swords and Sabers