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電子ビザでウラジオストク旅行するときのお役立ち情報いろいろ

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ウラジオストク市の中心部

概要

観光名所の紹介ではなく, ウラジオストク旅行する際に役立つ情報全般を書いておく. 路線バス乗り方とか買い物のしかたとか, 店の看板の見方とか.


出発から到着まで

まずは日本から発してウラジオストク市街地へ行くまでの話を時系列順で補足説明していく.

電子ビザ


によれば, 電子ビザで入国できるのは 沿海地方 (プリモルスキー・クラーイ, 州都: ウラジオストク), ハバロフスク州 (州都: ハバロフスク), サハリン州 (州都: ユジノサハリンスク), レニングラード州およびサンクトペテルブルク*1, カリーニングラード州. どこも8日間 (正確には24x8=192時間) 以内の滞在, 特定の検問所でのみ入出国手続き可能, 他の地域への越境は不可, という制約がある. 詳しい話は当局のサイトを見てほしい.

申請する前に, 宿泊地を決めなければならない. 申請書類に宿泊地を記入しなければならないからだ. booking.com でも適当なとこでもいい. ロッテなどのグローバルな大手資本のホテルは高いが, ドミトリーやカプセルホテルもいくつかある (しかしこれだけ観光客が急増すると供給が追いつかなくなって値上がりするかもしれない).

ウラジオストクの場合は電子ビザ申請画面の日本語版もある. 申請は, 沿海地方 (英語表記は Primorsky Kraj) とする. 発行される電子ビザの書面には, なぜかどこの州への滞在許可が出ているのか書かれていないので, ここで間違えると後から確認するのが難しい. また, 在露日本領事館によれば, ビザ申請時に姓名の表記順を逆にしてしまったせいで, 入国拒否された事例があるらしい まあこのへんは既に色んな人が詳しく書いてるのでそっちを参考に..

電子ビザ申請に必要な顔写真は, パスポートの写真を使った. ギリギリ6ヶ月以内の撮影だし, パスポートと同じ写真を使ってはならないとは書かれていなかったので流用させてもらった.

従来のビザ申請書類はフォント埋め込みがなくうまく印刷できないことがあるという話を聞くが, 今回発行された電子ビザはフォントが埋め込まれていたのでコンビニのネットワークプリントサービスでも印刷できた.

電子ビザは申請から4日以内に可否の結果が出る.自分は木曜日に申請して土曜日に許可が出た. 土日も業務があるのだろうか?*2 なので「4営業日以内」ではなく本当に「4日以内」らしい.

予め用意しておくと役に立つアプリ

地図アプリ

Google Map は以外とロシアの情報が乏しい. ロシア国内では, Яндекс (Yandex; ヤンデックス) という検索ポータルサイトGoogle のような立ち位置になっている. そのヤンデックスが開発した Yandex Map (Яндекс Карты) はバスの乗り換え情報などが Google Map よりも豊富なので, 事前にインストールしておいたほうが良い. ただし, インターフェイスは日本語には対応していないので英語かロシア語表示で使うしかない. 地名などはロシア語で検索しないとヒットしない場合がある. さらには似たような地名の全く別の場所もあったりするので, よく確認しながら使ったほうが良いだろう. ユーザー登録すると場所のお気に入り登録ができるので, ぜひしておこう (自分はやるのがめんどくさかったが, やったほうがめんどくさくなかったと思われる). 操作方法にも若干クセがあるので, 出発前に試しておいたほうがいいだろう.


Yandex.Maps and Transport

Yandex.Maps and Transport

  • Yandex LLC
  • ナビゲーション
  • 無料

その他, Yandex Transport という乗換案内アプリもあるらしいが, 私は使わなかった.

タクシーアプリ

ロシアで使える主要なタクシーアプリは gett と Yandex Taxi. ウラジオストク市内には Uber Taxi も走っていたのだが, 日本で登録した Uber はなぜか使えなかった.


Yandex.Taxi

Yandex.Taxi

  • Yandex LLC
  • 旅行
  • 無料


Gett - The Best Black Cabs

Gett - The Best Black Cabs

  • GT Get Taxi Ltd.
  • 旅行
  • 無料

sim フリー端末

私は海外用 wifi のみ使うつもりで, sim フリー端末も用意しなかったのだが, タクシーアプリはロシア国内の電話番号で登録しないと使えない場合があるようだ. ロシア語で交渉するのがめんどくさいのなら, 現地の sim カードを使える端末を用意したほうが良いと思われる.

懐中電灯

ウラジオストク市内は坂が多く, また主要道路以外にはあまり街灯がなく, 舗装が痛んだままになっているところも多い. そのため日没後に歩いて足をくじかないように懐中電灯を用意したほうが安全だと思う.

おすすめ情報源

http://urajio.com/

割と頻繁に更新しているので役に立った.

空港と市街地

私は成田-ウラジオストクアエロフロート航空の便 (実際には子会社のオーロラ航空のコードシェア便) を利用した. なお乗客のほとんどは日本人だった. ロシア人は半分もいなかったと思う. フライト時間は2時間半. 北海道や韓国へ行くのと大差ない.

入国審査所では, ПАСПОРTНЫЙ КОНTРОЛЬ/PASSPORT CONTROL と書かれたブースが5つほど並んでおり, 適当に順番につく.

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空港の入出国審査所の例 (出国時) (タス通信 より)

外国人・国民と言う風に分かれてはいなかった. 在ロシア領事館のサイトでは「入国審査官は英語をほとんど解さない」などと書いているが, 実際ほとんど話せなさそうだった. 順番が来ると審査官が手招きのジェスチャーをするので待っている. 書類が多いので, 審査官は手元で長時間ゴソゴソと作業する. 出国時もそうだったので時間には余裕を持ったほうがいいだろう. もろもろの確認が終わると*3, ミグレーションカードを渡され「サイン」とだけ言われる. カードと言っても普通の紙に書面をコピーしただけのものだ. 2箇所 ”signature“ と書かれている欄があるので, 両方にサインして返すと半分に切断し片方を返される. ぞんざいな扱いだが, これは出国審査に必要なのでパスポートおよびビザと同様に大事に保管する.

空港内

よくある地方空港のように, チェックインカウンターは1階にある. また, 日本と違いロビーに入るだけでもセキュリティチェックが必要である.

空港のロビー1階中央のエスカレーター横には ATM がある. 現金は少額に分けたほうが使いやすいので最初は1000ルーブルずつ引き出していたが, 実は1万ルーブル以上引き出す際は, 100ルーブル何枚, 200ルーブル何枚, と細かくして出金するオプションがある. 私が使ったのは Банк «Восточный» (バンク 〈ヴォストーチニー〉; 東方銀行) の ATM である. 迎えに来てくれたタクシーの運転手に, この銀行の ATM が便利だとオススメされた. 他の銀行の ATM にも同様の機能があるかもしれない.

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空港内の ATM. 左から2番目の ATM を使った.

3階ロビーの土産物屋に混じって「日本製品の店」が存在していた.

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出発ロビー前にある「日本製品」の売店

なぜ日本? と居合わせた見知らぬロシア人も訝しんでいた. 画像を見て分かるように, 日用品が無造作に置かれていたり (カイロや洗濯バサミはまだ分かるがアク取りシートは何のために?), 韓国製品が混じっていたりコンセプトがよくわからない店だった. しかしプラグ変換器が置いてあるので, 万が一C型変換器を忘れたときは役に立つかも知れない.

帰国時

先に帰国時のことも書いておく. アエロフロート (オーロラ航空) の帰りの便は午前中なので, 早朝に出発して空港で朝食を取る予定だった. しかし, 有名なスタローヴァヤ, «ПОЛЕT» (パリョート; 英語名 Flight) はもはや利用できなくなっていた. 看板が塗りつぶされている.

tripnote.jp

しかし, それでも一抹の期待を持って利用できないかとどう見ても職員用の出入り口に入っていく観光客が私を含め数人いた. 他にも数人, 私と同じ目的地を目指す人間を見かけた. そもそも職員用通路を使わせるのは防犯上の問題はないのだろうか (職員とも何度かすれ違ったが, 特に咎められなかった)? ちなみに ПОЛЕT までは階段を降りたり入り組んだ通路を通ったりする必要がある.

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壁や床のあちこちにスタローヴァヤへ誘導する矢印がある.

仕方なく, ロビーにあるカフェテリアで食べることにした. こちらもスタローヴァヤの形式に近いが, 相場よりもやや高いらしい.

国際線チェックインカウンターは正面から向かって左側だが, 時刻表は右側の国内線のカウンター付近にあるディスプレイのほうが多く表示される. また, アエロフロートの発券機も国内線のほうに2台設置されている. しかし片方は故障している. ネット上でも数ヶ月前に旅行した人がやはり, 片方故障していたと書いていたのでずっと放置されているようだ.

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発券機. 左側はずっと故障中

保安検査と出国審査を受けた後の制限エリアは, 地方空港のためさほど賑わっていない. ウォッカやお菓子などを扱う土産物屋1件, カフェ1件, 高級ブランド品を扱う, どこの空港にもありそうな店が1件づつと, 小規模である. 土産物は制限エリアに入る前になるべく買っておこう. 国内線のほうがどうなっているのかは不明.

空港から市街地へ

空港は出る際は何もないが, 入るときにはボディチェックと荷物検査がある (いわゆる保安検査だけでなく, ロビーに入るときにも検査が必要).

空港内部の雰囲気は以下のページが参考になる.

4travel.jp

ウラジオストク国際空港は市街地から 50 km 近く離れている. そのため徒歩で移動するのはまず無理である.

  • 電車 (Аэроэкспресс; アエロエクスプレス)
  • タクシー
  • バス

電車

アエロエクスプレスという電車が空港と市街地 (ウラジオストク鉄道駅) を結んでいる. しかし日に5本程度しかない.

なお, 空港の公式サイトも独自にアエロエクスプレスの時刻表を掲載しており, 英語や日本語版ページも用意していて便利だが, 実は英語版や日本語版はたまに時刻が間違っているという罠がある. できればロシア語版で確認しよう.

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ウラジオストク駅にあった当時の時刻表. 左がウラジオストク発, 右がウラジオストク着で, 赤字が空港行き

当時は最終が 17:40 発で, 今回私が利用したアエロフロート SU 5480 便の到着とその後の手続きを考えると, 間に合わなさそうなので事前にタクシーを手配しておいた.

帰国時は, ウラジオストク鉄道駅からアエロエクスプレスに乗って空港に行くこともできる.

入り口の端末で切符を買うこともできるが, メールアドレスとか電話番号の入力が必要らしく面倒なので係員から買うことにした. 入り口に入ってすぐ, 金属探知機で検査を受ける (プラットフォームには他の場所からも入れるのだが, これに意味はあるのだろうか?). その後で係員に切符を注文する. 料金は, 通常席が 250ルーブル, ビジネスクラスが 380ルーブルなので, 距離を考えると日本と大差ない料金だ. ビジネスクラスと言っても席が少し広くなったり, 謎のリラクゼーション映像が流れたり, 水が飲み放題だったり, 新聞が読めたりするだけだが... たった130ルーブルの違いなので, 記念にビジネスクラスに乗ってなんとなくリッチな気分になるのもいいのかも知れない. なお, アエロエクスプレスの切符はレシートみたいな紙切れなので, 誤って捨てないように. 行き先は「ウラジオストク国際空港」ではなく, 旧称であるクネヴィチ空港 (АЭРОПОРT КНЕВИЧИ) と表記される.

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アエロエクスプレスの切符

終点の空港には直結している. ただし, 空港のロビーに入る際には例によって検査を受ける必要がある.

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アエロエクスプレスのビジネスクラス車両

タクシー

白タク運転手の勧誘はここでもある. タクシーセンターで頼んだほうがいいだろう. もしくは gett や Yandex Taxi を使おう.

なお, 近年は自家用車の急増により, ウラジオストク市街地は夕方~日没の時間帯にひどい交通渋滞が発生する. 乗用車のほとんどすべてが日本製でかつ右ハンドルなので, 海外向けのモデルではなく日本の中古車だろう (パトカーですら中古車のようだ). これだけ普及しているということは, ロシアの物価水準でも日本の中古車はかなりリーズナブルな値段なのだろう. 自分の乗ったタクシーもプリウスで, 日本語表示のカーナビ画面が停止したままだった (ロシアでは当然使えないので運転手は地図を表示したスマホを固定していた).

バスとタクシーは実際の所要時間+30分くらいを見積もったほうがいいだろう. 渋滞中は手持ち無沙汰なのでタクシーの運転手と雑談が始まった. 運転手いわく, ウラジオストクで一番天気が良く過ごしやすい時期は9月だから今の時期に来て正解だとか, 「日本は暑いのか? 30度? 自分はバクー (アゼルバイジャンの首都) 出身だが夏は40度を超えることもあるぞ, ちなみにロシアでは40度を超えるような気温を『インドのような夏』というんだ」などとという話をした. コーカサス地方はおそらく乾燥しているだろうから高温でも不快感は少ないだろうが, 湿度が高い日本の夏は想像よりも暑く感じるはずだ, と咄嗟に言える語学力はなかった.

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日本国内で撮ったと言っても疑われなさそうである.
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9割方が日本の中古車である
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夕方の市内中心部はここまで渋滞する

バス

バスも当然あるが, 利用してないので詳しいことはわからない. なお, 別のセクションで書いているがウラジオストクの路線バスはかなりボロく, バリアフリー設備など望むべくもないので, 荷物が多いときは要注意である. マルシュルートカならば比較的新しい車両が多い.

言語

英語は通じない

ほぼ通じない*4. 私も滞在中に英語を話す観光客を一度しか見かけなかった. 特に極東地域では英語に触れる機会がほとんどないので, ロシア人は英語が苦手であると思われる*5 . 最初から英語で話してくれたのは空港内で土産物屋をしている店員くらいだった. 私が空港で乗ったタクシーの運転手も基本ロシア語しか話せず, 私が聞き取れなかったフレーズは Google 音声翻訳を使って英語に翻訳してコミュニケーションを取ってくれた. 空港以外では, 一定のグレード以上のホテルや観光客に人気のあるレストランなら英語ができる人は多少いるが, それ以外の場面ではあまり通じないと考えたほうがいいだろう (そもそもレストランなら英語メニューを用意してくれる場合が多いので, 最悪指差しだけでなんとかなる. 本当に困るのは込み入った話を伝える必要に駆られたときだけだろう.).

売店やスーパーの店番にはそこまで丁寧な対応を期待してはならない (これはロシアに限らず日本国外ではどこも共通だとは思う). ロシア語でまくしたてられることが多いが, こちらも頑張ってロシア語でコミュニケーションを取ろうとすればわりと親切にしてくれる*6.

ロシア人は仏頂面であることが多いが, それは赤の他人に愛想笑い・営業スマイルをしたり慇懃に振る舞ったりする習慣がないだけであって, 機嫌が悪いわけでも, あなたを特別に毛嫌いしているわけではない (たぶん). むしろ見知らぬ通行人が向こうから絡んでくることもある. 以下は今回の旅行中に絡まれた詳細情報.

  • 知らない10代くらいの女の子に髭を引っ張られそうになった
  • 知らない男性と持っているデジカメがかぶっていたので「いいカメラだな」と褒められた (向こうはこちらがロシア語を理解している前提).
  • バスに乗ったら知らない老婆に挨拶される.
  • 宿泊施設の廊下で鉢合わせした清掃係のおばさんが世間話をしてくる (向こうはこちらがロシア語を理解している前提). ちなみに清掃係のおばさんもたいてい仏頂面だが, こうやって話しかけてくることから別に機嫌が悪いわけではないことが分かる.

日本人ならば街中で知らない人に声を掛けるとき, 「すみません」とか断ってから切り出すが, ロシア人はおそらくそうしない. 路線バス内では赤の他人と思われる人にバスの行き先を尋ねるのを見たが, 切り出した方は申し訳無さそうにしないし, 相手もスマホでゲームかチャットをしながら視線も合わさず返事をしていた. そして質問の答えを得たほうも, 特に礼も言わずに去っていく. ロシアではこれが常識であり, 失礼には当たらないのだろう.

なお, ロシア滞在経験の長い人間のいう「時間をたずねてくる老婆に何度も出くわす」「くしゃみをすると赤の他人でも『おだいじに!』と叫ぶ」などは残念ながら体験できなかった.

看板のロシア語を読めるようにする

ウラジオストクは観光客向けに日本語看板を出しているところもあるが, 一部のレストランや土産物屋だけである. むしろロシア語以外では中国語やハングル*7のほうが圧倒的に多いので, これらが分かる人は便利かもしれない. ロシアの商店の特徴として, 外装にあまり頓着しない傾向があり, また古い建物は大きく窓を取らないため中の様子がわからず (そして古ぼけた外観からは想像もつかないほど, 内装にこだわっていたりする), 一見して何の建物なのかわからないことが多い. しかし, 一部の高級店やチェーン店を除いて, 店名ではなく何の店かをあらわす最低限の情報だけの看板を出していることが多いので, 書かれている単語を読めればだいたい何の店かがわかる. Yandex Map の検索も捗るだろう. 看板はたいてい全て大文字なので, 以下も原則大文字で表記する (キリル文字の小文字は大文字をそのまま小さくしたものが多いので, 小文字でも見た目はあまり変わらない).

ただし, ロシア語は各変化がある言語なので, 文脈によって語尾が変化する. よって語尾は変化したり, 文字が増えたりする.

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靴 (ОВУВЬ) 屋. アパートの部屋や地下室を改装して店にしていることも多い.

  • レストラン: «РЕСTОРАН» (レスタラーン).

    • 中華料理レストランなら, КИТАЙСКИЙ (キターイスキー), 韓国料理なら КОРЕЙСКИЙ (カリェーイスキー), グルジア (ジョージア) 料理なら ГРУЗИНСКИЙ (グルズィーンスキー), 日本料理なら ЯПОНСКИЙ (イポーンスキー) という形容詞が頭に付く.

    • カフェ: «КАФЕ» (カーフェ). 我々の感覚ではレストランだと思えるような店でもカフェを名乗ることが多い. ちなみにコーヒーは кофе (コーフェ) という. コーヒーが飲みたい場合はコーヒーカップの絵や, кофе と書かれている看板を探したほうがいい.

  • スタローヴァヤ: «СTОЛОВАЯ» カフェテリア形式の大衆食堂. 辞書的な意味としては必ずしもカフェテリア形式に限らないが, この看板を出していればおそらくカフェテリア形式である. このような形式の飲食店はソヴィエト時代に普及したらしい. レストランと比べると安い.

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    スタローヴァヤの看板の例

  • 土産物: «СУВЕНИРЫ» (スヴェニールィ) 英語の souvenir から.

  • ルーブル: 値札やレシートには Р (エル) という記号で書かれていることが多い. それ以外では РУБЛЬ (ルーブリ), РУБЛЯ (ルブリャー), あるいは РУБЛЕЙ (ルブリェーイ) と書かれる. なぜ3種類もあるかというと, これは数変化があるからなのだが, ロシア語の文法を格変化と数詞から説明する必要がでてくるので詳しくは省略する.

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    コインに見る複雑なロシア語の数変化
  • バスタクシー: «АВTОБУС» (アフトーブス), «TАКСИ» (タクシー). ただしバス停はバスの絵が描かれた看板か, いかにもバスの待合所のようなシェルターがあるのでこの単語自体はあまり見かけない. バスに関する詳しい話は後述.

  • ホテル: «ГОСTИНИЦА» (ガスチーニツァ), まれに «ОТЕЛЬ» (アチェーリ). 後者はフランス語の «Hôtel» (オテル) から. 日本人同様, ロシア人も外国 (特に仏・英) 風の響きに高級さを感じるため, 外国語風の名前が好まれる. ちなみに гость (ゴースチ) は客, ”guest“ という意味で, ГОСTИНИЦА もこれに由来する. とはいえ, 宿泊施設は HOTEL とか HOSTEL とか英語で看板を出しているところがほとんどだろう.

  • 博物館美術館: «МУЗЕЙ» (ムゼーイ).

  • 寺院: «ХРАМ» (フラーム).

  • 空港: «АЭРОПОРT» (アエロポールト). 英語の airport のまんま.

  • 記念碑石碑: Памятник (パミャートニク), Стела (スチェーラ).

  • 売店 (雑貨店): «МАГАЗИН» (マガズィーン). 英語の magazine に由来するが, ロシア語では雑貨店, ひいては小規模な小売店を意味するようになった. МАГАЗИН の前後に形容詞や名詞をつけて, ○○の店, という看板を見かけるが, 何を売ってるかだけを表して МАГАЗИН という単語は省略されていることも多い.

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    ウラジオストク鉄道駅向かいのスーパーマーケット
    • ミニマールト (MИНИMАРT) という単語 (固有名詞?) もある. 英語の minimart と同じである.

    • スーパーマーケットは «СУПЕРMАРКЕT» (スペルマールケト).

    • 百貨店 (デパート): УНИВЕРМАГ (ウニヴェルマーク). универсальный магазин の略称. универсальный は英語の universal に由来する. ГУМ (グム) という名前もよく知られているが, これは固有名詞.

  • 食料品: «ПРОДУКТЫ» (プラドゥークティ). 英語の products に由来する単語だが, ロシアでは食料品だけを指す言葉になっている. 観光地にある店ならパンや飲み物, お菓子, 缶詰, 魚の干物など加工食品を売っていることが多い.

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    ウラジオストク鉄道駅の近くの食品店
  • ミネラルウォーター, 炭酸水: минеральная вода (ミネラーリナヤ・ヴァダー), газированная вода (ガズィラヴァンナヤ・ヴァダー). ミネラルウォーターは炭酸水も含むという認識の人が多いので, негазированная вода (ニガズィラヴァンナヤ・ヴァダー; 炭酸でない水) を探したほうがいいかも知れない. 飲用水を買うときはこの単語を探せば炭酸なのかどうかがわかるだろう. 単語が長くて覚えづらいかも知れない. газированная の先頭の газ (ガース) はそのまま, 英語のガス, gas に由来することを知っておけば覚えやすいかも知れない. また, レストランでは水ではなくレモネード (ЛИMОНАД リマナート, 複数形は ЛИMОНАДЫ リマナーディ) を勧められることが多い. レモネードと言っても, ロシアではレモネードをベースに果汁で味付けしたものであることが多く, たいてい何種類も用意されている. 実質ジュースである (ちなみにジュースは сок; ソーク と言う). スプライトやコカコーラもたいていのレストランで用意されている.

  • トイレ: «TУАЛЕT» (トゥアレート). ロシアでは野外の公衆トイレは少ない. あっても木造の非常にボロくて不潔なものか, 日本でもイベント会場や建設現場にあるような仮設トイレをたまに見かける程度である. このタイプのトイレはたいてい集金係が待機するブースが付属しており, 20ルーブルの使用料を払う (20ルーブル以外の使用料のものは私は見ていない). アルセーニエフ博物館内のトイレは壁が本棚になっているという斬新なデザインだったが, 男子トイレの中もかなり斬新だった (何が斬新かは行って見てのお楽しみ).

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    ウラジオストク鉄道駅前の広場にある公衆トイレ. 使用料 20Р と書かれている
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    アルセーニエフ記念沿海地方立歴史博物館内のトイレ
  • 鉄道駅: «Железнодорожный вокзал» (ジェレズナダロージュニイ・ヴァグザール). 単に ВОКЗАЛ とも. 特に長距離列車の駅をこう呼び, 近郊線や地下鉄の駅 (Станция; スターンツィヤ) とは区別される. 看板では «Ж/Д ВОКЗАЛ» と略されることも多い*8.

  • 出入り口: «ВХОД» (フホート; 入口)/«ВЫХОД» (ヴィホート; 出口) はバスのドアや商店などあちこちで見かける. 防犯上の理由で, スーパーなどでは入り口・出口が決められていることが多い.

    • ドアは, 「引」の場合は «НА СЕБЯ» (ナセビャー; 直訳すると「自分の方向へ」), 「押」の場合は «ОT СЕБЯ» (アトセェビャー; 直訳すると, 「自分の方向から」)と表現する.

  • 止まれ: «СTОП» (ストープ). 英語の STOP をキリル文字に置き換えただけである. ロシア語にも当然止まるという動詞はあるのだが, 標識はたいてい СTОП と書かれている.

  • 閉店・休業中: «НЕ РАБОTАЕT» (ニラボータエト). 直訳すると「動いていません」という意味. 閉店・休業中だったり故障中だったりするとこう書かれている.

  • 注意: «ВНИМАНИЕ» (ヴニマーニエ). 注意書き. 危険を促す看板に書かれる.

  • 禁止: «ЗАПРЕЩЕНО» (ザプレーシェナ). 軍事施設や危険地帯などにはこの看板がある. 立ち入り禁止ということ.

  • 禁煙: «НЕ КУРИTЬ» (ニクリーチ). ピクトグラムも併記されていることが多いので読めなくても困らない. そして日本同様, 必ずしも守られているわけではない. (禁煙と書かれたすぐ隣に喫煙所があったりする. 謎.)

  • 罰金: «ШTРАФ» (シュトラーフ). 上記禁煙の看板に併記されていることが多い. 偽警官や不良警官が旅行者を騙し罰金と称して金銭を巻き上げることが昔はよくあったらしい.

  • 警察: «ПОЛИЦИЯ» (パリーツィヤ). パトカーや警察官の制服の胸・背中などに書かれている. なおロシアの警官や軍人は撮影禁止である. たまたま写り込んだくらいならいちいち文句を言われなさそうだが, 狙って無断撮影すると怒られる可能性がある. (しかしネット上には普通に撮影したものアップロードしている人がけっこういる)

  • 警備員守衛: «ОХРАНА» (アフラーナ). スーパーやその他商業施設の人の出入りの多い場所などにはたいてい1人は張り込んでいる. そういう人間の着る制服にはこう書いてある. 書いてないこともあるが, だいたい黒っぽい服で警棒を腰に指し, 同じ場所を動かずずっとあたりを睨みつけたり暇そうにしたりしているので警備員だとすぐ分かる.

その他, 観光客はほとんど利用しないだろうがよく見かける看板. 意味を知っていればさらに観光を楽しめるかもしれない.

  • : ЦВЕТЫ (ツヴェーティ). 複数形. ロシアには24時間営業の花屋が多い. そういう店は 24 ЧАСА (24時間) という看板も出している.

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    24時間営業の花屋 (といいつつこの店は昼間しかやっていない)
  • 野菜果物: ОВОЩИ (オーヴァシ), ФРУКТЫ (フルークティ). どちらも複数形. ロシアでは小分けにして売られているものはあまり見ないので, 観光旅行では買う機会はほとんどない.

  • 修理: РЕМОНТ (リモーント). 修理屋も多い. たいていは靴 (ОБУВЬ; オーヴフィ) や車 (MАШИНА; マシーナ) を修理する店である.

  • ケーブルカー: ФУНИКЛЕР (フニクリョール). ウラジオストク市内には一箇所しかなく, 一見してケーブルカーと分かるので読めなくとも困ることはない.

  • 大学: «УНИВЕРСИTЕT» (ウニヴェルシチェート). ウラジオストク市内には, 極東連邦大学をはじめいくつかの大学がある.

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    極東連邦大学の施設
  • 薬局: «АПTЕКА» (アプチェーカ). 長期滞在するのなら必要になることもあるだろうが, 電子ビザでウラジオストクに訪問するなら数日程度の滞在だろうから, お世話になることは少ないだろう.

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    ГУМの隣の薬局

時刻・スケジュール関係

時刻は英語圏のような 12時間表記ではなく, 24時間表記が多い. 一方で, 曜日はロシア語である. 営業時間やバスの時刻表では略称で書かれることが多いので, 一覧を書いておく.

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営業時間表示の例
日本語 ロシア語 略称 発音
日曜日 воскресенье Вс ヴァスクリセーニエ
月曜日 понедельник Пн パニジェーリニク
火曜日 вторник Вт フトールニク
水曜日 среда Ср スリダー
木曜日 четверг Чт チトヴェールク
金曜日 пятница Пт ピャートニツァ
土曜日 суббота Сб スッボータ

例えば「月曜から金曜」 ならば Пн-Пт などと書かれる. ПН-ПT のように2文字とも大文字の場合もある. また, 日付は <日>, <月>, <年> の順で書くことが多い. 月は数字の場合もあれば, 月名の場合もある.

日本同様, 平日と休日で分ける場合もある. ежедневно は毎日, つまり平日休日関係なく同じ, робочие дни は直訳すると「労働する日」つまり平日, выходные は週末という意味で使われる. праздничные は「祭りの」という形容詞で, つまり祝日である. выходные и праздничные дни などと書かれていれば 休日・祝日ということになる.

略称

ロシア語の省略の仕方は多種多様である. すでに紹介したように, 曜日は先頭の子音2つだけに略される. 「鉄道駅」は Ж/Д ВОКЗАЛ と合成語を分割した上でそれぞれの頭文字だけ残している. ウラジオストク (ВЛАДИВОСTОК) も時刻表などで表記すると長いので, Вл-к と略されたり, しまいには В. だけになってしまう.

これらに注意してこの記事や参考文献として挙げたページにあるロシア語を読むと, 予行演習になるかもしれない.

交通手段

路面電車はほとんどない

数年前まではいくつもの路面電車 (трамвай; トラムヴァーイ) が市街地を走っていたらしいが, 現在では1路線しかない. おそらく急激な自家用車の増加が関係しているのだろう. そのため市街地では車道が妙に広く, ところどころに線路の残骸が見える. 現在残っている路線も観光地からは外れているので, 観光客にとっては乗ることそれ自体が観光目的になるだろう.

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市内唯一の路面電車路線
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ウラジオストク鉄道駅前の道路に路面電車の痕跡が残っている.

また, ケーブルカー (フニクリョール) が一箇所だけある. これは鷲ノ巣展望台に登るためのものだが, むしろ麓側に行く機会がないので, ケーブルカーに思い入れがなければ普通にバスで行ったほうが楽である.

バスの乗り方

出発前に確認した日本語情報では, 市内路線バス運賃がどれも違ったのであまり当てにしないほうがいい. おそらく頻繁に改定されている. 実際, 私が訪問したときは 23 ルーブルだったが, 10/1 からは 28 ルーブルになったようだ. とはいえ, 日本円で50~60円程度なのでかなり安い. 市内のバスならばどこで乗り降りしても同一料金である*9. また, 現金のみでクレジットカード・電子マネー決済などもできない*10. また, 中心部ならば5~10分に一度のペースでバスがやってくるのでかなり便利だ. しかし, それなりの代償はある.

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バス料金変更を知らせる張り紙 (現在はさらに変更されている)

難関1: バス停がわかりにくい

バス停はシェルターや看板があるのだが, これも老朽化していたり看板がなかったりすることも多い. そしてバス停の名前も書いていない. 時刻表も時刻が書かれてたかと思えば「XX分間隔で」と書かれていたり, 略号が使われていたりとかで, ある程度ロシア語に慣れていないとわかりづらい. さらには時刻表に書かれていないバスが到着したり, 時刻表がないところも多い (おそらくはダイヤ改定が反映されていない). また, 市内は渋滞しやすいので時刻通りに来ないこともよくある.

バスの系統番号はだいたい数字だが, たまに 7т みたいなのもあったりする. 基本的に, バスの正面上部に路線番号が, 側面 (歩道側) に番号と行き先リストが書かれている. 何番というのを表記する際には英語のように № という記号を使うことが多い.

ウラジオストク市内ならばだいたいのバスがウラジオストク鉄道駅に停まる. どうしてもわからなければ, ж/д вокзал と書いてあって駅の方面へ走っていればあればおそらく駅で停まるだろう.

バスに混乱しないためにも, Yandex Map はやはりぜひとも用意しておきたい. ルート検索でバスを選ぶと「あと何分で到着」といった情報が表示されたり, バス停に書かれているダイヤよりも, Yandex Map の検索結果が正しいことが多かった.

また, 多くのバスが止まる停留所は, バスで渋滞することが多い. そのような場合は, 停留所の後方の離れたところに停まったり, 二重駐車したりする*11. こういうときは待っている客が見落とさないようにクラクションを鳴らしてくれる.

ところで, ロシアの路線バスは2種類ある. 大型の2ドアバスと, バンを少し大きくしたような車か, マイクロバスくらいの大きさの маршрутка (マルシュルートカ) がある. ウラジオストク市内ではどちらも料金は同じだ. バスもマルシュルートカも決められたルートとダイヤに沿って走行し, 停留所で乗客を降ろしたり乗せたりするが, 後者は停留所以外でも降りたいタイミングで申し出れば降ろしてもらえるという違いがある, らしい (試したことがない). しかし, 大型の路線バスでもひどく渋滞しているときに乗客の一人がここで降りると言い, 停留所でないのに降ろしてしまうのを見たことがあるので意外と柔軟なのかも知れない. なお, マルシュルートカは Yandex Map では ”minibus,“ Google map では「乗り合いタクシー」と表記される. マルシュルートカは路線バスのようだが, 「ルート通りに走るタクシー」という意味の名前なので「乗り合いタクシー」でも間違えではない. 市内では路線バスとして時刻通りに運行するマルシュルートカがほとんどだが, 郊外や近隣の自治体へ行く場合は乗客が一定数集まり次第出発するタイプもあるらしい.

入り口には ВХОД (フホート; 入口) と書かれている. 2ドアバスも前後どちらからも乗れるようだが, 降客は前から出てくるので, 後ろのドアから乗ったほうがいいだろう*12. ちなみに基本的に発車してからドアを閉めるのでドア付近にいて振り落とされないように注意.

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マルシュルートカの内部より. 市内のバスターミナルの1つ, Семеновская (セミョーノフスカヤ) に停留しているところ

難関2: バスがボロい

中国や韓国製の中古のバスを使っている (自家用車は日本の中古車が圧倒的に多いが, 日本製のバスだとドアが車道側になってしまうのでさすがに使わないらしい). 車内は吊革が壊れていることがしょっちゅうだ (なので吊り革を垂らしている棒を握る). 道路も悪く, 中古車ゆえサスペンションが劣化しているためけっこう揺れる. 座席のクッションも弾力性が失われつつある. 車体の外装のカラーリングもデザインも全く統一感がない. 路線番号が書いてあるか, パックツアー用の貸切バスでないか, 気をつけなければならない (ЗАКАЗНОЙ, ザカーズナイと書かれているバスが貸切バスだが, 読めなくともツアー用のバスはだいたい他よりきれいなのですぐ分かる).

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特にボロかったバス

難関3: 降りる場所がわからない

停留所のアナウンスは基本的にはないと考えたほうが良い. まれにスピーカーが付いていてアナウンスしてくれるバスがあったが, スピーカーがあっても壊れているのかうんともすんとも言わないものもある. 現地の老婆がバスの入り口から, «— ехать?» (○○へは行くの?) と聞いてくる場面を何度も見たので, 路線もよく変わっているのかも知れない. また, 日本のバスと違い降車ボタンもない*13.そういうわけなので, Yandex Map のリアルタイム位置確認をしたり, 何番目の停留所で降りなければならないか覚えておく, などの対策が必要になる. 降車ボタンがないので, 乗り降りに関係なく停留所には必ず停まるようだ. とはいえ降車ドアに近づいて降りる意思を見せないとすぐ発車する可能性はある. 基本的に降車は前のドアである. ВЫХОД (ヴィホート; 出口) と書かれている. 降りる際に運転手に料金を払う. だいたい運転席のそばに台があって, そこにお金を置く. 釣り銭が必要なら手渡しされるが, 台の上に小銭を置きっぱなしにしている運転手もいて, 自分で勝手に釣り銭を取っていく乗客もいる. いいのか. 運転手は釣り銭を大量に持っているので, 100ルーブル紙幣などでもお釣りをくれる. 海外では額面の大きな紙幣で払うと「もっと細かい額はないか」と文句を言われるという話をよく聞くが, 今回の旅行ではバスに限らずほとんどそう言われることはなく, 淡々と釣り銭を数えて渡してもらった.*14. よって料金がいくらなのか確信を持てない場合は, 50ルーブルや100ルーブル紙幣を出すのもあり. ただし, 高額すぎると数人分をまとめて払うのかと思われて «Сколько?» (スコーリカ; 何人分?) などと訊かれることがあるので注意. 既に書いたように, 運賃はよく改定されるようだ. 車内にはふつう料金表示がある. поезд (この単語は乗り物と言う意味だが, 「乗り物の運賃」の「運賃」の部分が省略されて) という単語の後に数字が書いてあれば, おそらくそれが運賃だろう.

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マルシュルートカの出口

最後に一応, アナウンスの定型文も書いておく. 発車直後は,

«Следующая остановка, XXX (- конечная).»

「スレドゥーユシャヤ・アスタノーフカ, XXX (- カニェーチナヤ).」

「次のバス停は, XXX, (終点です).」

と言う. конечная は終点のときだけそう言う. たまに補足説明が後に続いたりする.

停車時には停留所名だけを言う.

買い物

ロシアではクレジットカードの普及率が低いという日本語情報があるが, 少なくともウラジオストク市内ではほとんどのレストランやスーパーでカードが使えた. 小さな商店でもカード読み取り端末がある. 読み取り端末が非接触型決済用端末であることも珍しくないので, タッチ決済対応カードがないと使えないかも知れない. ロシア語ではカードは карта (カルタ) という. クレジットカードも, sim カードもカルタ (シム・カルタと発音していた) である. 単にカルタと言えばその時の文脈で通じるだろう.

カードが使えないのは露店やキオスクとバスくらいだった. 博物館の入場料は, 使えるところと使えないところがあった気がする. ただし, ここはアメリカではなくロシアなので American Express は全く使えない. Diners も使えない. VISA か MasterCard を用意しよう.

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ズベルバンク, VTB などのメガバンクをはじめカード決済サービスを提供する企業は多彩だ

昔は「高額紙幣で払おうとすると, 両替するから待ってて, と言われ隣のレジに, それでも足りずに隣の店へ‥‥」とか「お釣りが足りないので代わりにガムをもらった」などということがあったと噂されているが, 今回私はそのような体験をしなかった. ミネラルウォーター1本買うのに5000ルーブル札を渡したりすればさすがに文句を言われるかも知れないが.

スーパーで買い物するときは, もう1つ覚えておいたほうがよい単語がある. пакет (パケート) である. これは英語の packet と同じで, 包装を意味する. 会計のときにパケートがどうこうと言われたら, おそらく包装するかどうかを聞かれているので да/нет ですみやかに答えよう.

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郵便局内にあるスーパーの陳列棚

食事関係

レストランと大衆食堂

「レストラン」という看板を出している店は比較的値段が高いが, とはいえ日本の一流高級レストランほどではない*15. しかし, 作法は高級レストランのように, 食べ終わってから店員に会計をお願いして初めてバインダーに挟まれたレシートをもらう形式になっている. ロシアではチップの習慣はあまりないようだが, 会計のときに1割程度心付けをしておくのが粋だとされている, らしい*16. バインダーに代わりに代金を挟んでおくと, そのうち店員が受け取りに来る. お釣りがチップとみなされる. カードで払う場合はカードとは別に現金を挟んでおけばチップとみなされる. 代金さえ置いておけば勝手に店を出ていってもいいらしいが, 自分は何か手違いがあるのが怖くて店員が取りに来るまで待っていた. なお, スタローヴァヤ等は夜8時くらいで閉まるところが目立つが, レストランを名乗る店は昼頃から開店し24時までやっているところがほとんどだった.

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チップ歓迎とのこと
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このように挟んで置いておく.

一方で, スタローヴァヤやファストフード店, コーヒーショップなどはおそらくチップはいらない. 先払いの店はチップ不要, 後払いの店はチップ推奨, くらいに覚えておくといいかもしれない.

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ロシア・バルト海周辺国に展開しているフィンランド発のバーガーショップ, HESBURGER. 作法はマクドナルドなどと同じである.

自分が訪問したレストランは以下の通り. ほとんどはトリップアドバイザーなどの口コミサイトや『地球の歩き方』にも載ってるような有名所なので, 意外性はない. 店員は必ずしも英語が得意でなさそう*17が, 私の会ったタクシー運転手のように google 音声翻訳を使ってコミュニケーションを取ろうとしてくれた, という情報もあるので, 接客は丁寧であると思う. また, 観光客向けレストランなら少なくとも英語, 場合によっては中国語・韓国語などで書かれたメニューを用意しているところが多い. 英語でコミュニケーションをとってほしいときは, По-английски (パ アングリーイスキ; 英語で) と言う. しかし相手がロシア語しかできなければ返事もロシア語なので, 割と気休めである. レストランや土産物屋ならば相手も外国人観光客に慣れているので, 何らかの方法で対応してくれることが多い.

Ложки-Плошки (ローシュキ・プローシキ; スプーンと小鉢)

内装に凝っており, 明るく清潔感があるので観光客にかなり人気がある. 日本語のメニューも用意されている. ペリメニが人気.


公式サイト


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ローシュキ・プローシキの入り口. 店名が筆記体なので慣れないと判読しづらい. この手前にも立て看板がある.
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シベリア風, シーフード, などペリメニのレパートリーが豊富である.

Порто-Франко (ポルトフランコ; 自由港)

名前はイタリア語の ”porto franco“ (自由港) にちなんだものだろうか?

実際, 内装は「陽気な南欧の港町」をイメージしたと思われる出来になっている. メニューはオーセンティックなロシア料理がそろっている. イタリア料理はない.


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ポルトフランコの入り口.
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ポルトフランコの内装
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カニと野菜の冷製スープ

Кафе Studio (カフェ・ストゥディオ)

レストランというよりはバーのような雰囲気の店. この店は24時間営業らしい. 日本語メニューもある. 醤油もある.

goo.gl

公式サイト


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硬いパンに入ったボルシチ. 手前の肉巻みたいなのはサーロ?
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醤油と書かれた瓶 (中身も醤油)

Хлопок Чайхона (フローパク・チャイホナ; ティールーム・木綿)

Чайхона というのはウズベクティールーム (ティーハウス) のことをいうようだ (ここに限らずウズベク料理の店はみんな Чайхона と名乗っているのかも知れない). 市内に3店舗あるらしい. 私が行ったのはオケアンスキー通り (ул. Океанский) の店.

このレストランは中央アジア (特にウズベキスタン) とコーカサス地方の料理がメインの店. しかしメニューにはカリフォルニアロールなどの「スシ」もある. 入り口に禁煙マークがあるが, 店内には水タバコをやる客が大量におり甘ったるい臭いが立ち込めていた (喫煙者は1階のみで, 私は2階に通された. よって喫煙するつもりがない人は臭いを気にする必要はなさそうだ.). 内装も中央アジア風でかなり凝っている. スタッフの着る Tシャツに cotton 100% と印字してあるのはジョークだろうか.

良いレストランだが, 観光名所の集中しているエリアからは少し離れているので, バスかタクシーを使ったほうが良いだろう.


公式サイト


ウラジオ.com の紹介ページでは閉店と書かれているが, 書かれている住所が全然違うので, 実際には移転しただけだと思う.

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フローパク 2Fの内装
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ウズベク料理で揃えて注文した

Кафе Пхеньян (カフェ・プェーニヤン; カフェ平壌)

鉄道駅から少し南下したところの, カザンスキー教会 (Казанский храм) の近くにある, 北朝鮮政府が外貨獲得目的で運営しているという噂のいわゆる「北朝鮮国営レストラン」. 東南アジアや中国にもあるらしいが, 近年は北朝鮮への経済制裁により閉店が危惧されているという話も聞く. ここはロシア語だけでなく英語が普通に通じる. スタッフはおそらく北朝鮮出身者なので韓国語*18ももちろん通じる (というか入店したら「アンニョンハセヨ」と出迎えられた.). なお, ウラジオストク市内には他にも, «Корё» (コリョ; 高麗), «Кым Ган Сан» (キムガンサン; 金剛山) というレストランがあり, これらも北朝鮮政府とつながりがあると噂されている. アングラ感があるが, すでに口コミで有名になりつつあるのか訪れる日本人観光客も多い.

おそらく北朝鮮政府とは関係のない韓国 (朝鮮) 料理店も市内にいくつもある. 私は行かなかったが, 特に有名な高級韓国料理店に «Шилла» (シッラ; 新羅) がある.

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カフェ・平壌の外観
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平壌冷麺

Тбилиси (トビリシ)

グルジア (ジョージア) 料理のレストラン. G.G. Group という企業のチェーン店らしい. ウラジオストク市内のジョージア料理店はどこも立地がよく人気がある一方, この店は繁華街から離れたところにあり, また月曜の夜だったからか客が全くいなかったので穴場かもしれない. 内装も凝っている. 席に付くと始め店の前に座り込んで一服していた強面の男性がやってきて (店員だったのか……) が開口一番, «Поговорите по-русски?» (ロシア語は話せますか?) とのたまったので緊張が走ったが (あの様子だと英語はほとんど話せなさそうだ), 接客は丁寧で良かった. メニューはロシア語だった. 英語メニューがあるかは確認してない. ナイフとフォークが用意されているが, 伝統的なジョージア料理は手づかみ前提なように思える. 料理もワイン (もちろんジョージアワイン) もうまかったが, ハチャプリ (画像の左のパン) が思ったより大きかったので腹いっぱいになり, ヒンカリに挑戦できなかった.


公式サイト (ウラジオストクではなくモスクワ店)

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レストラン・トビリシの外観
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レストラン・トビリシの内装
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伝統的なジョージア料理

飲用水・軽食の調達

日本と違い, 自動販売機はほとんどない. 空港に数カ所ある程度である (非接触型カード決済もできるようだ). 代わりに市内のあちこちや, 郊外の大きなバス停留所の近くなどには必ずといっていいほど КИОСК (キオスク) がある. 雑誌なども売っているが, 観光旅行ならば飲み物を買うくらいだろう.

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典型的なキオスク. 雑誌や新聞が所狭しと陳列されている.

また, 特に観光客の多いウラジオストク鉄道駅前や噴水通り (アドミラル・フォーキン通り) から西の海岸方面には露店が多く出ている. кебаб (ケバープ; ケバブ) や морожное (マロージュナエ; アイスクリーム), пянсе/пян-се (ピャーンセ; 朝鮮風饅頭) が売られている. 中国と朝鮮半島に近いため, 東アジア風の料理も多い. その他, 麺料理も売られている. これは名前がまちまちで, вок (ヴォーク; 中華鍋 wok のことか) とか удон (ウドン; うどん) とか呼ばれていたりするが, おおむね野菜と肉と一緒に炒めた焼きそばのような調理法である. 中央アジア由来の麺料理であるラグマンとも混同している気がする. キオスクは概ね日没後くらいに閉店する.

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チキンうどん
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イベント会場で注文したВок. 箸は полочки (パローチキ) と言う (今回初めて知った)

その他, 他のヨーロッパ諸国のようにミニマーケットがあちこちにある. ПРОДУКTЫ と書かれている店ならば, 飲料水や菓子, パンなどが売っているだろう. ウラジオストク鉄道駅には深夜便もあるため, 駅の向かいにある СУПЕРMАРКЕT は比較的遅く夜10時まで営業している. さらに長距離移動する客を想定してか, お土産, 軽食, 保存食, 日用品, さらにはスタローヴァヤもあったりとけっこう品揃えが豊富だった. 高級ホテルではなくドミトリーやホステルのようなところに宿泊する場合は役に立つだろう. クレジットカードも使える.

なぜかチェコビールの, Kozel (コゼル) と Krušovice (クルショヴィツェ) の2銘柄がいろいろな店に置かれていた (レストランでもよくみかけた). 駅前のスーパーには Staropramen (スタロプラメン) まで置いてあった. 日本製の洗剤やインスタント食品もちょくちょく見かけた.

スタローヴァヤ形式の食事の例: Салад (サラート; サラダ), Плов (プローフ, ウズベキスタン風ピラフ), Кебаб (ケバープ), Каша (カーシャ; 蕎麦の実を茹でたもの. 蕎麦以外の雑穀でもカーシャという.)

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典型的なスタローヴァヤの食事

*1:つい最近, 2019/10/1 から適用

*2:受信時刻はモスクワ時間でも土曜日になってからだった

*3:髭をかなり長く伸ばしていたのですごい怪訝な顔で二度見され, 「なんだその髭は」というジェスチャーをされた

*4:ネット上では「意外と英語が通じる」と言う人もいるが, おそらく英語でのコミュニケーション経験が豊富で, かつロシアに好意的で簡単なロシア語なら理解できる人である可能性が高い.

*5:英語を無理に話してもらっても訛りが強いのでロシア語のほうが分かりやすいまである. 中国人観光客が多いのでむしろ中国語のほうが理解してもらえるかもしれない? モスクワはもう少し英語ができる人が多いのだろうか? ナッドサット語やチャトル=パッツ語が通じるかは不明.

*6:レジでもたもたしていると舌打ちされるという話をよく聞くが, 私は試してみなかった. 一方で, 私がレジの列についていると他の店員が別の空いているレジに誘導してくれたりもした. 文化が違うと他人に対する親切の基準が変わるということだろう.

*7:中心部にも韓国系の人がやっている土産物屋があり, その店は全てのロシア語にハングルが併記されていた.

*8:うんちくだが, 「鉄道の」という意味の железнодорожный は железно (鉄の) дорожный (道路の) という2つの形容詞の合成語なので ж/д と略される.

*9:定期券や回数券を使ってる人を見かけなかったので, そういったものはないようだ.

*10:こういう話もあるが, 電子化が普及するのはもう少し先のようだ.

*11:駅のターミナルが一杯なのに無理やり割り込もうとして渋滞を起こしているバスもいた.

*12:客が降りてから後ろのドアを開けることが多いが, 客が降りないうちに前から飛び込んでくるせっかちな人も見かけた.

*13:一応, 一部の優先座席には降車ボタンが付いているが, 機能するのかわからないし, 健常者が押してどういう反応をされるのかは知らない.

*14:やたらと細かい釣り銭をくれるのは親切なのかあてつけなのか不明. コペイカを渡されたこともある.

*15:食べる量にもよるが, 後で紹介するレストランはなるべく高いものを選んでアルコール込みでも1人2000ルーブル (3000円程度) くらいだろう. もちろん, ずば抜けて高いスペシャリティーメニューもある.

*16:観光客向けに, レシートに「チップはなくても大丈夫ですが, もしいただけるなら大歓迎です」と英語で書かれてたりする.

*17:ロシア人は多くの場合, こちらが少しでもロシア語がわかりそうなそぶりを見せるとすぐロシア語に切り替えてくるのでどの程度英語が話せるかは確認していない.

*18:朝鮮語の南北の違いについては私は詳しくないので分からない