Sarmaticus

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[料理] 漫画『売国機関』に出てきたポンチキを作る

経緯

カルロ・ゼン 原作, 品佳直 作画の『売国機関』
www.shinchosha.co.jp
の番外編

売国機関 - カルロ・ゼン/品 佳直 / 番外編 | くらげバンチ

を読んでポンチキ食べたくなったので売ってるところを探した. 東京都では柴崎の辺りに「ポンチキヤ」というそのままな名前の店がある

www.google.com

しかし, 運悪くたまたま休日で食べ損ねた*1ので, 自分で作ることにした (その後, 日を改めて食べることができた).

先に断っておくが, 単に国内でうまいポンチキを食いたければ上記の店に行ったほうが早い (通販もやってるらしい). この記事は菓子を作った経験のないあほが漫画に影響されてポンチキを作ろうとした顛末の記録に過ぎない.

ポンチキとは

ポーランドのドーナツである. よくあるトーラス形状のやつではなく, ベルリーナー型である. ミスタードーナツでいうならエンゼルクリームのようなやつである. なお, ポーランドでは「脂の木曜日」にポンチキを大量に食べるらしいが, 今年 (2019年) の脂の木曜日は, 2月28日にあたるとのこと.

作り方

YouTubeで公開されている料理動画はいろいろあるが, 分かりづらかったり, 生地を混ぜるのに機械を使っていたりするものもある.

その中でも機械を使わず, わりとわかりやすい映像と説明だった以下のページを主に参考にした.

www.youtube.com

なお, このやり方だと揚げた後に注入しているが, 先に生地で包むやり方もあるようだ.

www.youtube.com

材料

上記のリンク先のものを参考にしているが, 自分の設備では材料が多すぎるため, 重量で 2/3 程度に減らしている.

  • 小麦粉 (薄力粉を使った) 960cc (約480 g)*2
  • 卵 2個
  • 牛乳 230 cc
  • バター 56 g
  • 砂糖 (上白糖を使った) 54 g (大さじ 6 杯)
  • アルコール類 *3小さじ 1杯
  • ドライイースト 6 g*4
  • 揚げ油 (市販のサラダ油でよい) 1リットル程度*5
  • 詰め物 (フィリング)
    • ジャムやカスタード, チョコレートなど液状ならなんでも*6
  • アイシングの材料 (任意, 今回は適当にやったのでアイシングの作り方は他のサイトを参考にしたほうが良い)

    • 粉砂糖 100 g程度
    • 牛乳 少々
  • その他
    • 油 (生地を保管するボウルに塗るため)

器具

  • ボウル (2個あると良い)
  • ラップまたはクッキングシート, またはふきん
  • 揚げ物用の鍋と菜箸
  • トングまたはすくい網
  • 4インチ (=約7.5 cm) の抜き型 (似たような大きさのマグカップを使った)
  • 口金と絞り袋

手順

上記の動画も参考にしながら作る.

生地を作る

砂糖とバターをよく混ぜる. 冷蔵庫から出した直後のバターは冷えているので固く, 混ぜにくい. なるべく室温に戻しておいたほうがやりやすいだろう. 十分に混ざるとクリーム状になる (図 1).


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図1: 砂糖とバターがよく混ざった状態
図1: 砂糖とバターがよく混ざった状態

次に, 卵を加える. バターと卵を混ぜるのはさらに難しい. いい加減にやるとバターが細かい粒になって残り, 十分に混ざらない. 動画のように, 複数回に分けて少しづつ卵を混ぜるのも良いが, 冬場だからかそれでも非常に混ざりにくかった. 結局, 湯煎しながら混ぜることになった (図 2).


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図2: 図1に卵を混ぜた状態
図2: 図1に卵を混ぜた状態

さらに, 牛乳とアルコールを加えて混ぜる. 牛乳もぬるま湯程度にしておく. 今回指定した量であれば, 500Wの電子レンジで 20秒くらい温めるとちょうどよい. 熱すぎればイースト菌が死滅するので気をつけること. これにドライイーストとアルコール類も混ぜる.

小麦粉を混ぜる. 最初から全量投入せずに, 半分くらい入れてすこしかき混ぜてから残りを投入したほうが混ぜやすい.

ある程度混ざったら, 台の上に打ち粉し, その上で生地をこねる. 動画では, 生地のこね方について細かく言及しているものはないが, とりあえずパン生地をこねるのと同じようにやってみた. つまり, 生地のベトベト感がなくなり, きめが細かくネバリが出るまで台にこすりつけるようにこね続け, それから何度も台に叩きつけた. 動画では8~10分かけてこねるとしていたが, 台が小さなまな板しかなかったので効率がわるかったのか, 30分くらいかかった.

十分にこねたら, 丸めて安置し発酵するのを待つ(図 3). 生地が2倍になるか, 2時間待つ. 動画の通り, 生地がひっつかないようにボウルに油を塗って放置した. 冬なので暖房のきいた部屋 (設定温度はたぶん23度くらい) で放置したところ, 解説の通り2時間程度でだいたい良くなった.


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図3: 発酵前の生地
図3: 発酵前の生地

台の上で一旦伸ばして折りたたみ (https://www.youtube.com/watch?v=57Tnz_Alfyc の2分30秒あたりからを参考に), 水分が抜けないようにラップをかぶせて再度30分寝かせる.

生地のカット

麺棒で厚さは1 cm程度になるよう生地を伸ばす. 抜き型など持っていないので, 直径8cm程度のマグカップで型抜きをした.

まな板が小さいため, 複数回にわけて型をとった.

これにさらにラップをかけて , 再び膨らみ厚さが 2 cm程度になるまで待つ. これはだいたい1~2時間かかった (図 4).


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図4: 揚げる直前の生地
図4: 揚げる直前の生地

揚げる

油をいれて予熱する. 動画では 170度C程度と言っているが, 揚げ物用の温度計を持っていないので確認できていない. 正確な温度がわからない場合は, 温度が高すぎると表面だけが焦げてしまうため, 温度を高くしすぎないように気をつけたほうが良いだろう. また, 揚げ油の量については, ポンチキの大きさを考えて, 最低 4~5cm くらいの深さは必要ではないだろうか. 油自体は市販のサラダ油を使った. 今回使った鍋の直径は25cm くらいだった.

生地と鍋の大きさを考えて, 同時に 3~4個の生地を揚げた. 動画では最初に片面ずつ1分, 次に片面づつ2分揚げる, とあるが, 正確な温度がわからないので色で判断する必要がある. 温度が高すぎると, 表面がきつね色を通り越して焦げ茶色になる. こうなると固く食感が悪くなったり, 焦げた表面の下に変な空洞ができたりするので, この後の詰め物に失敗しやすくなる. 激しく気泡が出るようなら, おそらく油の温度が高すぎる.

今回はやらなかったが, 以下のページで紹介している, ドーナツを揚げるときのように生地の破片を落とすという方法で温度を確認するのも良いかも知れない.

www.kyounoryouri.jp

詰め物をする

中に詰めるのは何でも良い. ポンチキ屋では, 定番メニューとして薔薇 (ローズペタル?), ラズベリー, チョコの3種類がある. 市販のジャムを使えばいいのだが, 詰めやすさを考えると, 固形物の含まれていないものをすすめる. 実がまるごと入ってるブルーベリージャムなどは詰まるため適していない. ピーチ/メルバにも果肉が含まれていたが, 崩れやすいのでギリギリなんとかなった. 動画では口金を使っているが, 菓子を使う習慣のない人間はそんなもの持っていない. なぜか手元にあった小型の注射器や, ラップで作った絞り袋を漏斗にはめてやってみたがどれもかなり難しかった. また, 先に書いたように揚げる温度が高すぎると生地が固くなり注入しづらくなる. 比較的うまくいったものでも図5 みたいな感じなので, おとなしく口金を買ったほうが良い (ポンチキヤのものはもっと多く入っている).


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図5: ブルーベリージャムでの比較的成功例
図5: ブルーベリージャムでの比較的成功例

アイシング

もちろんアイシングなど今までやったこともない. ので, よく調べずに粉砂糖と牛乳を混ぜたものを塗っただけである. これに関しては他のドーナツやクッキーの料理法を参考にしたほうが良い. 手抜きをしたければ, 粉砂糖をふりかけるだけでも良い.

完成

図6,7 が完成図である.


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図6: 完成品
図6: 完成品


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図7: 漫画は電子書籍しか買わないので無理やりなツーショット (少し暗い)
図7: 漫画は電子書籍しか買わないので無理やりなツーショット (少し暗い)

違いは一目瞭然である. 自作ポンチキは食べられないことはないが, やはりちゃんとした店のものと比べるとあらゆる点で及ばない. まず, 写真を見ればわかるように, 色も形もよろしくない (これでも見栄えの良いものだけを選んで上の方に乗せていることに注意). ポンチキヤのは均一に火が通っており, 中はふわふわし, (油や砂糖を多く使っているはずなのに) しつこさがない.

今回の方法の改善点として, 一番に挙げられるのは火加減である. 油温度が高すぎるとふんわりしたポンチキ作りはほぼ失敗する.

次に, 生地をこねる広い台である. これは小さいまな板では難しいし, 生地の残りを固めて再度型抜きをしたものはだいたい形が悪くなるため, なるべく一度に型抜きできるように伸ばしたほうが良い. しかしこれは独り暮らしの部屋の広さでは難しい.

加えて, 一人で食べるには難しい量のポンチキが出来上がるので, 万が一失敗すると数日かけて失敗作を食べ続けることになる.

……というわけで, ドーナツなんかを作り慣れている人は挑戦してみてください.


*1:知人を誘って行くと, 最近こういうアクシデントによく見舞われる気がする.

*2:打ち粉用に余剰があると良い.

*3:ラムやブランデーを指定するものが多いが, 菓子に合った甘い香りのするものなら何でも良いようだ. 今回は手元にあったジャックダニエルテネシーハニーを使った.

*4:日清スーパーカメリヤのドライイースト (www.nisshin.com) を2袋使った. 他の製品だとどの程度が適量なのかはわからない.

*5:鍋の大きさによって変わってくる.

*6:今回はアヲハタのブルーベリー, ピーチ・メルバを使った. 1瓶あれば十分だと思う.